【溺れる想い】
コポ コポ コポポポ ───
深く
深く
この想いを
どこまで沈めたら
あなたに
見つからないかな?
気づかれちゃいけない
気づいちゃダメ……
うんん…
本当は気がついて欲しい
深く深く沈めたはずの想いは
いつの間にか 浮上して
気が付けば可愛げのない言葉で
必死に隠している
さぁ
泡のように消し去りましょう
そしたら
何も変わらない
このまま変わらず
隣で笑っていられるよね……
"タネも仕掛けもございません"
手品のように パチン と音を立てながら
何もなかったみたいに…
あなたに気が付かれる前に……
「ニノ……ねぇ、どこ行ったの?」
ああ…探してる……
あなたが俺を探してる…
それだけで心が弾む
ダメ…いけない
喜んだりしちゃダメ…
それでも今 あなたの頭を占めるのが
俺だけだと思えば
エクスタシーすら感じてしまい
全身が 疼 いてくる
こんな俺を知られてしまったら
きっとあなたは全てを気付いてしまう
犬なら尻尾
人魚なら尾鰭
簡単に喜びを表すものが無い事を
心から安堵する
もし、この狂喜を示すものが
自分に備わっていたのなら…
いくら 深海まで 沈めたところで
なんの意味も成さずに全てが暴かれる
それなら俺は あなたの隣に居る為に
"ソレ" を引きちぎってでも隠してやるよ
俺の覚悟、舐めないでよね
「あ……こんな所に居たの?」
あーあ
見つかっちゃった…
まぁ、隠れてたわけじゃないからね
まるでオモチャでも見つけたみたいに
ワクワクしているあなた…
ねぇ…
俺を見つけられて嬉しいの?
分かりやすいんだから……
そんな所もあなたの魅力
「なんだょ、1人でずっちーなぁ
クフフ……俺も入っちゃおっかなー?」
かなー?じゃないよ
もう、半分以上脱いでるじゃない
あっという間に全てを剥ぎ取って
逞しい綺麗な身体を曝け出す
もう、やめて…それ拷問?
馬鹿みたいにドキドキさせないで……
さっきまでの決心は
いとも簡単に揺らいで 心を揺さぶって
それだけの威力持ってんの
ちゃんと分かってる?……分かってよ
そんな俺を知る由もない
いつもと変わらないキラキラした笑顔で
おまえは俺の領域に踏み込んで
必死で取り繕う自分が何故か滑稽に思える
肩に触れられた
……全身が心臓になったみたい
滑らせるように撫でられる腕
……自分の腕じゃないみたい
大きな手が頬に添えられ
端正な顔立ちが自分に向かって近付いてくる
……もう、夢だと思い込もう
ギュッと目をつむって
隠したい想いを 閉ざしても
あなたは 呆気なくこじ開けてしまう
重なる想いは
水音を立てて
深く深く繋がって
あなたも
いっしょに 溺れてくれるの
END