BLです
ご注意ください
やっと会える!そう思っていた気持ちは
目の前に現れた奴のせいで脆くも崩れ去っていった。
待ちに待っていた想い人ではなく
むしろ1番会いたくない男……
俺のカズを1年も好きにしやがって…
それだけで腸が煮えくり返る勢いだ
横関の組頭はそれを知ってか知らずか…
いや、勿論 知ってて呑気に
「おおきに、相葉の旦那♡」と
食えない笑顔を見せていた。
「横山……おまぇ
ウチのもんどうした」
「おぉ、こっわ!
せっかくの美人が台無しやで?」
「……早く出せ
約束はしっかり果たしてもらう」
綺麗な顔が凄むと迫力がある
そんな表現が1番似合っていた。
普段、穏やか過ぎる見た目の相葉は
組の跡取りには向いてないと言われる事もしばしあった。
そんな外見とは裏腹に本来の若頭として見せる姿には、誰もが黙る程の冷酷さと迫力を秘めていて
そのギャップに皆、閉口する事 暫し……
「あぁはいはい、分かりましたよ
別に出し惜しみしてもええやんか、なぁ?」
後ろを振り返った横山は傍に居た大きな男に合図すると、その男は少し開いていた扉を大きく開けた。
「だからやめましょうって言ったのに…」
知った声が聞こえた。
ずっと聴きたかった声…
ずっと、会いたかった……
「……カズ?」
大男の後ろからゆっくり現れたのは
「若、ただいま帰りました
ちゃんと元気にしてましたか?」
勿論、大好きな……
その笑顔を見た瞬間
考えるよりも先に体が動いていた。
「わっ!……ングッ」
「カズ……会いたかった」
「おまぇ……ったくもぉ
……若、私もですよ」
やっと、おまえの温もりを
腕の中に閉じ込める事が出来た。
もう離さない
離したくない
離したりしてやるもんか
「なんやもぉ、お熱い2人やんなぁ
…って、おいコラ!無視して何処行くねん」
カズの肩を抱き寄せたら
もっと欲しい、もっともっとと…
直接 温もりを感じたくて
愛しい気持ちが 溢れて止まらない。
だからさっさと自室へ向かおうとすれば
一気に視界に入らなくなってしまった横山は
面倒臭い事におおいに不貞腐れてしまった。
「…あぁ、わざわざ送って頂きご苦労
櫻井、丁重に帰って貰え…」
勿論それに付き合うつもりもなかった。
「かしこまりました」
「コラコラコラコラ!
わざわざ送ってきてやったんやでぇ?
東京もんにはもてなす心っちゅーもんは
ないんか?!」
「若にはそれよりも
大事な御用がございますので…」
「くぁーーーっ そうかいそうかい!
カズーっ おぃ!…ちゃんと話しとけよ?」
「っ……はぃ、承知してますょ」
「…話?」
「ならええわ。ほななー
また、何かあったらよろしゅう」
気になる言葉と怪しい笑いを残して
横山は「せっかくだから観光でもしてくかぁ」
なんて言い残し 陽気に帰っていった。
「おぃ松本、塩まいとくぞ」
「承知」
「で?話って?」
さっきまでの再会を喜ぶ笑顔と
甘い空気はもうどこにもなかった。
甘かった瞳も鋭く射抜くように細まっていく。
「若、こちらに先ず目を通して…」
「……それは話と関係あんの?」
「…ありませんが」
「じゃあ、今じゃなくていい
話とやらのが先だ、気になる」
部屋に入って来た途端に
強引に壁に押し付ける形で続いてく会話は
逃れる事は出来ないと、案に示した。
「…若、あのっ」
「カズ…まーくんは?
今は二人きりだよ。忘れちゃった?」
「/////っ……まーくん」
「うん、なに?」
「あの……先方からの提案で、もう2度とこの条約を使わないと約束してもいいと仰ってました…条件付きですが」
「へぇ…それは思っても無い申し出だな…
でもその条件とやらがきっとろくでもないんだろうね?」
「はい……あ、うん」
「そんなに、言いにくいこと?」
下手な事を言えばどうなるか分からない…
そんな態度を隠さずにぶつけると
「あちらの組の…大野をこちらで引き取って欲しいと言ってきてます」
ずっと聴きたいと思っていた声が
やっと聴こえるような小さな声で
煩わしい内容を発した。
「大野を?」
「元々出身は関東ですし、腕は確か
悪い話ではないと仰ってます…」
「ふぅん……大野…ね。
お前にご執心じゃあ、なかったか?」
「…まぁ、そうだったみたいですね」
「あっちで、そいつに何もされなかった?」
それを1番心配していた。
そして何故あちらはそんな優秀な人材を引き取れと言うのか…2つにイラついた。
「っ……はぃ…」
まったく…
ポーカーフェイスは得意な方だろ?
でも…知ってる。俺に見つめられると
いつもの自分ではいられなくなるおまえを
上擦る声、締め付く胸をギュッと抑え
息が荒くなっていた。
「ほんと、俺に嘘付くのだけは下手過ぎ」
「まっ……んンンッ」
噛み付くように 口付ける。
久々に味わう 熱い 口内…
とてつもなく甘い気がした。
「ハァ……こういうこと、された?」
「んっ…やだっ……まっ、て!」
「ココとか、ココも…」
俺じゃない手は、触れたの?
「っ……まーくんっ」
「カズっ………カズ!!」
崩れていく理性は
一体、今迄何でせき止められていたのか
今となってはもう分からない…
そして、もう2度とその理性は
戻らないと確信した。
求めて…求めて…
どれだけ求めても
立場という大きな枷が邪魔をして
声に出しては求める事が出来ず
何度、夢で会えたとしても
起きたら隣はもぬけの殻で…
心も空っぽだった。
おかげでこの1年は
張り詰めた緊張感で自分を纏い
会えない寂しさから逃れるように
組を大きくしていくことに没頭した。
でも、やっぱり……
「カズを…こうして抱きたかった……」
「んっ…おれっも……ンァっ
抱いて、欲しかっ……たぁっ」
「もう離さないから」
2度と離れないでいいという枷が
今はその男だと言うのなら
喜んで受け入れようじゃないか
あちらの思惑なんて
蹴散らしてしまえばいい
おまえを 離さないと決めたんだ
もう二度と……
続