BLです


ご注意ください







はじめは青さんが
1人で暫くココに居たらしい。

次に赤さんがやって来た。
2人になったから色々とこの屋敷を
調べ回ったそうだ。

少ししてから紫君が来て
そして今までこの屋敷に
3人で暮らしていた。他に住人は居ない。


みんな、最初はこの部屋で
倒れていた所から始まっている。

もちろん、目が覚めた時は
俺達のように自分が誰なのか
何も覚えていなかったという。


不思議な事ばかりだ。



緑が落ち着いた後
テーブルを囲んで
いくつもあるソファに各々座ると

赤さんが分かりやすいように
今までの事を説明してくれた。


緑と俺は2人掛けソファに並んで座り
3人の対面する位置をとった。


「あの、ここから出て
  助けを呼ぶとかはしなかったの?」


まだ不馴れな感じで緑が赤さんに質問した。
それは俺も思った事だった。

でもさっきココから出れないって
赤さん、サラリとすごい事を言ってた。

それはどうして?


「さっき、黄ぃにも言ったけど
  この敷地内から出ることは出来ないんだ」


「ど、どうして?」


「俺達もさ、今まで結構色んな事を試して
  なんとかココから出ようとしたのよ?」

「でも、ぜーーんぶダメだったな」

「この敷地全部が塀に囲われてる。
  出入り口の門とかどこにも無かったし」

「塀を無理やりよじ登って外へ
  出ようとしたけど、ダメだった・・・」


3人が交互にその時を思い出すように
話して、そして落胆の色を示した。


「どうなったの?」


恐る恐る聞いた。
赤さんが、哀しそうな顔で言った。


「ふりだしに戻るかのように
  気がつくと、この部屋に戻ってるんだ」


「は? なにそれ・・・」


まるで現実味の無い答えだった。


「だから1つの仮説を立ててみた。
  ココは元々俺達が居た場所とは
  違う世界なんじゃないかって・・・」


「異世界?」


「うん、そんなとこかな」


「じゃあ、俺達・・・
  一生ココから出られないのかな?」


なんて絶望的な言葉だろう

一瞬でみんなの気持ちが
落ちていくように感じた。


「それは・・・分からないよ
  でも何もしないまま
  こんな所にずっとは居られない」

「そうだよね・・・だって生きてくにも
  食料とか、必要なものが無いと
  このまま俺達、餓死するだけだよね?」


そういえば
さっきの畑は、そういう事なのか?


「ココのおかしい事の2つ目
  何故か食料はたっぷりあるんだ」


「え?」
「なにそれ?」


「キッチンの冷蔵庫の中には
  どれくらい持つか分からないけど
  凄い量の食材が入ってたんだよ」


「さっき、黄ぃを連れていった裏庭の畑も
  その横にある川も有り得ない事ばっかだ」

「畑に種を植えたら次の日には実ってるし
  川に釣竿を垂らせば、魚は釣れ放題」

「井戸水もあるから水も困らない」


・・・なんっだ、それぇ?

おかしいだろ?
そんなの普通じゃない!

あ・・・そっか
もう既に普通じゃない事ばかりだった


「まるで、夢でも見てるみたいだな」

「フフッ・・・それ、俺らも思ってたよ」


じゃあ、もう夢なのかもよ?

明日、目が覚めたら・・・

またきっといつも通りの日常が
始まるのかもしれない


俺の、いつも通りの・・・・

それが何も思い出せないんだけどさ
 

「今が何月何日で、何時なのかすら
  分からない。ただ、日は昇って落ちる
  それだけで1日の終わりが分かるだけだ」

「一応、日が昇って落ちたら1日って
  それが何回目とか数えてはいるんだけど
  それも今じゃ無意味な気がしてるよ」


「でもさ、太陽の位置で時間って
  大体は分からなかったっけ?」


「おかしな事3つ目。
  いや、もう おかしな事しかないんだけど
  太陽は見えないんだ。明るい時間があって
  そして急に暗くなるんだ・・・・」

「それが1番ココでの不便な所だよな」

「だからみんな
  灯りを携帯するようにしてる」


有り得ない事実ばかりで
いきなり全てを受け入れる事が
出来そうもない。

思考回路がショートしそうだ。

横をチラッと覗けば
俺よりも混乱してる様子の緑が居た。


「なぁ、緑・・・俺、混乱し過ぎて
  もぅ、 ワケわかんないや・・・」

「黄ぃ・・・・ぅん、そうだね」


緑の声は既に泣きそうだ。


「いきなり有り得ない事ばかりで
  混乱するのも無理ないよ・・・」


「俺らだって、驚いてばっかだったしな」


「でも、コレが今現状の真実なんだよ」


突きつけられた事実に
何も言葉が出なくなる。


恐怖と不安で
隣に座っている緑の手をいつの間にか
ギュッと握っていた。


3人も、また現実を受け止めるしかない
やるせなさにか

さっきまでの
明るい表情は消えていた。


そして、暫く
誰も何も言えなくなってしまった・・・



最初に口を開いたのは
ココに最初から居た青さんだった。


「まぁ、よ・・・
  先は見えない、どうなるかも分からない
  何も分からない事ばっかだけどよ?
  ここにこうやって5人が揃ったのは 
  何か意味があるのかもしれねぇ・・・
  暗くなってたってしょうがねぇし
  今、出来ることをするしかないだろ?」


青さんの言葉にみんなの顔が
少し明るくなったように見えた。


「・・・ぅん、だな
  たまには青君いい事言うじゃん」

「おい紫!たまにはってなんだよ」

「また2人はそうやって言い合う〜」


この人達は、ずっとこうやって
支え合って来たんだろう

自分自身の事すら何も分からない
この不安だらけの中で・・・


「あ、暗くなった」


言われた通りに
前触れもなく急に真っ暗になった。


「え!こんな突然なの?」

「そうそう、ちょっと待っててね
  あ!やっべ…灯りの燃料が無かったんだ」

「赤、俺が明るくしてくるよ」

「じゃあ、俺も一緒に行くわ」

「あ、いいの?よろしくね」


青さんが自ら持ってた灯りを付けて
紫君と部屋を出ていった。


こんな真っ暗で何も見えないと
余計に怖いなぁ・・・


「黄ぃ、大丈夫?怖い?」

緑が聞いてきた。

「ん、大丈夫だょ・・・」


握ってた手を緑が握り返してくれる。


俺の怖いってホントの気持ちが
掌から伝わっちゃったかな?

繋がれた手が温かくて
気持ちが落ち着いてくる。


やっぱり

俺とおまえは
知り合いだったのかも・・・


緑の隣に居るだけで

何故か、気持ちが凄く落ち着くような


俺達、もしかしたら親友とか

そんな近い関係だったのかもしれない



「あ、点いた」



部屋の灯りが点いた途端


赤さんに見られるのが恥ずかしくて

繋いだ手を慌てて離した。









つづく
な、長い…長くなる…でも楽しい(⑉• •⑉)