BLです
ご注意ください
この邸に来た時からずっと
櫻子さんの後ろに控えていた彼は
少しオドオドした印象で
だいぶ若く見えた。
執事になって間もないはず・・・
どんな理由があって俺を狙ったと言うのか
腑に落ちない結末だ。
推理を披露する前に
事件解決してしまったのかな?
田中さんを見ても表情は変わらない。
目が合うと
いつものように微笑まれた。
でも、突然自白した執事に
ゆっくりとあいつが近寄って行くと
目の前に立ち、迫るような勢いで
胸ぐらの蝶ネクタイごと乱暴に掴んだ。
「おまえがやった・・・で、良いんだな?」
「は・・・はぃぃっ」
「どちらにしろおまえは終わりだが…
その覚悟で刃を向けたという事だな?」
「あっ・・・あぁぁ・・・・」
こんなにも、怒りを顕にしたあいつを
見たのは初めてかもしれない・・・
泰然とした振る舞いの中
突き刺すような瞳は
その執事の全身を震え上がらせた。
「使用人の分際で私のものを傷付けようとは
死にゆくよりも苦渋の日々を所望か?」
もう立ち上がる事すらままならない
恐怖に震える相手に向かい
容赦無く辛辣な言葉を浴びせた。
あまりの迫力と張り詰めた空気で
金縛りにあったように動けなくなった俺も
あいつを止めることが出来ず
それでもなんとか
首でも 絞 め そうな勢いのあいつを
止めようと立ち上がった
…瞬間
「おやめ下さい!!」
ずっと黙っていた櫻子さんが
必死にあいつの事を止めに入った。
「お願いです!貴族様!
どうか、おやめ下さいませ・・・」
「・・・・櫻子さん?」
「松崎は悪くありません!
私の指示で言われるままにやったんです!」
「・・・やはり
犯人は君だったんだね」
無表情だった顔に
いつもの貴族が戻ってきた。
あいつ、真犯人は
櫻子さんだと分かってたんだ・・・
掴んでいた手が離れると
執事は崩れるように床に蹲った。
「貴方がっ…私を見てくれないから
・・・少しだけ、脅かすつもりだったの」
「櫻ちゃん・・・」
「貴族様が以前話してくれた方が彼なら
私の出る幕なんて無いのは分かってたのに
もう、会って頂けないと思ったら寂しくて」
彼女の瞳からは大粒の涙が
零れ落ちていた。
会ってから今まで
彼女は感情を全く見せる事は無かった。
「お見合いと偽り彼を呼び出して
貴方に会いたかったんです…ごめんなさい」
初めて見せてくれた気持ちは
想いに焦がれる苦しみだった。
「櫻子さん・・・美しい女性に悲しみの涙など、似合いませんよ?それに、貴女に会わないなどと言った覚えが私には無いのですが」
「え・・・」
「私を待ち望む女性にお会いする事は
貴族として至極当然の事ですよ」
「でも・・・お会いしてくださっても
貴族様のお気持ちは彼だけのもの…」
彼女の真っ直ぐな焦がれる想い
きっと、同じ様に思っている女性は
あいつの周りに沢山いるはずだ。
あいつは
どう答えるんだろう?
思いがけず普段聞けない事が
聞けるのかもしれないとドキドキした。
「櫻子さん、私は貴族だ。
貴族が貴族として振る舞うのは当然の事
だから貴女に見せてる私が欲しいのなら
いつでも与える事は厭わないですよ?」
・・・・・ん?
それって・・・・・
え?堂々たる浮気宣言ってことか?!
ビックリし過ぎて思わず声が出た。
そんな俺を余裕の顔で一瞥したあいつは
目線を彼女に戻すと跪いて
「ただ、私の愛する者へ見せる私は
和也だけのもの・・・それで良ければ」
不敵に微笑んで
そのまま櫻子さんの手を取り、口付けた。
まるでお伽話の王子様みたいに
「やっだぁ♡
超ステキなんだけどぉ♡」
やっ/////ただキザなだけじゃん////
でも・・・
俺に見せているおまえは
貴族としてじゃない
何者でもないおまえ自身で
俺の傍に居てくれるんだ・・・
/////////・・・くっそっ
なんだか してやられた気持ちになる。
「あ、和也くんの顔真っ赤だ〜」
「よ、依子さん!///////」
「もぅ・・・敵いませんわね・・・・」
貴族の言葉に諦めたように呟いた櫻子さんは
深々と謝罪した。
自ら警察に連絡すると言ったけど
依子さんが絶対にダメ!と止めてくれて
俺も大きくはしたく無かったし
その場で収める事となった。
邸を後にする時
櫻子さんが俺にまた謝ってきた。
そして
「お幸せに」
そう、笑った彼女の顔は
どこかスッキリしたように見えていた。