BLです


ご注意ください











まさか 俺がいるなん思わないカズは
いつものように 普通に部屋に入ってきた。


俺に気付き、驚いた顔で対峙すると

一瞬 後ろに 下がって

止まり


今にも部屋から
出て行ってしまいそうだったから

先手を打つ



「ほら、座りなょ」


「っ・・・・・・」


「もう、逃げないでね」


「!!・・・・・」


先を越されて
渋々 座る カズは

連れてこられた猫みたいにこじんまりして
いつもクルクル動く瞳は 瞬く事もなく
ジッと 何かを見つめていた。


「カズ・・・」


名前を呼んだだけでビクッと揺れる身体に
思わず 負けそうになった。


怖がらないで・・・

お願いだから・・・・


「ねぇ、カズ・・・・
  俺、おまえの事  傷つけちゃった?」


俯いた顔は
フルフルと強く首を横に振った。


「そっか、なら…少し安心した」


1番気になっていた事が違って安堵する。


「まー、くん・・・」


「ん?」


「・・・ゃ、あのっ・・・・なんでもなぃ


消えてしまいそうな声に
影を落とした表情の
そんな弱々しいカズを見て


こいつって・・・・
こんなに 小ちゃかったっけ?


久しぶりに見たカズは
何故か守ってやりたくなるような雰囲気を
曝け出していて、まるで女の子みたいに見えた。


ずっと 隣に居た 幼馴染
そう思っていたけど・・・・・



なんて言おうかいっぱい考えてた事も
カズを見た途端に頭が真っ白になった。


でも、言葉は勝手に口から出てきて

それは 何も飾ったりしてない
自分の素直な気持ちなのかもしれない・・・
 

「ねぇ、カズ・・・ 何かあったの?
 俺に話してよ・・・話して欲しいょ・・・」


俺に、なんでも 話して欲しい


「俺は・・・おまえを守りたいよ」


「まぁくん・・・」


「おまえの痛み、俺にも分ければ
  半分になって 少しは楽になるだろ?」



真っ赤な目をして俺を見上げたカズに

咄嗟に湧いたこの気持ちは

なんなのかな?


・・・・堪らない?


堪らないと思った衝動で
その小さな身体を抱き締めた。


ふっ・・・ぐすっ・・・・

うぅー・・・・・・


胸の中で くぐもった泣き声が聞こえた。

こんなに泣いてるカズ、暫く見てない。


昔、虐められていたこいつを助けた時
あの時は周りを気にしない位
大声で泣いてたっけ・・・・・


あの頃は何でも素直に感情を出してくれた。


いつからかな?

その時は簡単だった事が

簡単じゃなくなったのは・・・・


ひとしきり泣いて
落ち着くまで背中をさすってあげた。


ずっと、知りたくて
気になってしょうがなかった

俺を避ける理由・・・

俺、せっかちだけど
今すぐに言えないなら良いよ?って
そんな 気持ちになってきた。

それに・・・もし

こんなに苦しんでるのが、もし、俺のせいなら
むしろ離れてやった方が良いのかもしれない
とか、段々 そんな風に思ってしまった。




どれくらい そうしていたか分からないけど
突然、グ〜と勝手に鳴る腹の音

いつの間にか静かになっている腕の中を覗いたら
やっぱり眠ってしまっていた。


泣き疲れたのかな・・・・
いつも俺の腕の中だと寝ちゃうもんな


優越感?
そんな気持ちになる。

そのまま抱き上げて
ベッドに運んで寝かせた。


寝顔は、さっきよりもスッキリしてる?


目にかかる前髪をかきあげてやると
眉間にまだシワが寄っていた。



「まぁー、く・・・
  ごめ、ん  なさぃ・・・・」



寝言?
何に、ごめんなの?

そんなにおまえを苦しめてる事って・・・



撫でる手を止め
鞄から紙とペンを出して手紙を書いた。

起きた時に読んで貰えるように




『カズへ

無理矢理は聞かないから
おまえが話したくなったら
話してくれたらいいよ


待ってるから

雅紀』