BLです
ご注意ください
「初めまして、和也君
今日から君の家庭教師になった…です」
彼との出会いは
まだ俺が二宮の後継者として
母親と屋敷に来たばかりの頃だった。
何も分からない俺にはすぐにでも
叩き込まないといけない事ばかり
彼は父親が俺に勉学や経営学を教えるように連れて来た家庭教師だった。
キッカケは父親の取引先の関係性を
円滑にする為の話題作り。
所詮、道具の1つに過ぎない出来事で
高学歴と、経営学を学んでいた彼に
是非ともウチの息子にと・・・・
なんだか人身御供のような取引だったようだ。
勿論、いきなり現れた彼に
俺は心を開く事はしない。
ただ言われた事を淡々とこなせばいい
そう思っていたから仲良くする気もなかった。
それでも相手の性格が柔らかく
自分よりも大人だったからか
いつの間にか彼の会話に引き込まれ
魅せられる知識にも関心を持たされ
いつの間にか色んな話しが出来る関係性を
築いていた。
まだ子供っぽかった俺は
大人の落ち着いた彼に憧れを持つようになり
いきなり環境の変わった不安な気持ちを
彼が支えてくれるようになったのも大きかった。
そして彼の手で
いつの間にかその気持ちは恋だと
錯覚させられるのはあっという間だった。
「カズは本当に可愛いなぁ」
「やめてよ、男が可愛いなんて言われても
嬉しくないんだからさ」
「じゃあ、可愛いと思ってても
我慢しなくてはダメなのかい?
それは拷問に近いな・・・」
「なにそれ(笑)大袈裟だなぁ」
「可愛いくて可愛いくて
食べてしまいたい位さ」
「もーー馬鹿にしてんの?/////」
「本気だよ・・・・
今すぐに・・・まずは、この唇から
いただきたいなって思ってる」
「○○さんっ//// ぁっ ちょっ・・・っ!!」
初めてのキスは、少し強引だった。
「君が好きだよ」
キスしてから告白なんて
大人の順番って反対なの?
余裕なんてない俺は俯いて
真っ赤になる事しかその時は出来なくて
それでも優しく笑う彼に
抱き締められたあの日が
凄く幸せだったと思ったのを覚えている。
このまま、ずっと好きな人が傍に居てくれたら
辛い事も乗り切れるんじゃないかと・・・
勘違いしたあの日・・・・
でも、あの時
そんな安易な考えは通用しないと
思い知らされたんだ・・・・
・
・
・
・
・
眠らされた後、目を覚ました時の
自分の状態にウンザリした。
ベッドに寝かされていた自分の手足は
手錠で繋がれ、ベッドの端に
括り付けられていて
身動きは出来ないようになっていた。
はぁ・・・ったく
なんなんだよ・・・・
まんまと相手の手中に収められてしまった
自分にムカついた。
趣味の悪い捕らえ方しやがって・・・
変態かよ・・・・
そういや昔も変態ちっくだったな・・・
「君の肌はなんでこんなに
白くて滑らかなんだ?
まるで白磁製のフランス人形のようだ」
思い出した瞬間
思わずゾワッと背筋に悪寒が走った。
寒っ・・・クソッ
嫌な事思い出した・・・
ちょっと手足を動かしてみると
カチャカチャと金属音が耳についた。
この音・・・
あの時の音と似てて
嫌いだ・・・・
あーーーあ、どうしよう・・・
逃げる機会が出来るのを待つしかない・・・
小動が影山に連絡してくれてるから
あっちからの助けを待つか?
いや、それもどうなるか分からないし
期待するより自分から動かないと・・・
コンコンコン
逃げる方法を思案していると部屋の扉が開いて
俺をココに連れてきた男が入ってきた。
「二宮様、お目覚めでしたか」
「おい、なんだよこれ・・・
随分な歓迎の儀式だな?…早く外せよ」
「主人からの許可がないと無理ですね」
「・・・こんな事してどうする気なんだ」
「それも、主人の御心次第でございます」
「チッ・・・・トイレも行けねーじゃん」
「その場合、この部屋についてますので
動ける範囲で錠を外させて頂きます」
「あ、そ・・・・」
「お食事をお持ちしましたので」
「まだ食べたくない」
「では、こちらに置いてますので
いつでもお召し上がり下さい」
「・・・・・・・」
「何かありましたらベルでお呼び下さいませ
失礼致します」
パタン
・・・むっかつく執事だなっ
影のが数ひゃく倍良い!!
事務的な事を済ませると
さっさと部屋から出て行ってしまう
使用人を睨んでも何も変わらない。
起きた時から喉が渇いていたから
目の前に置いてある水だけ
ゴクゴクと飲み干した。
あーーーー!!
なんでこんな事に!!
苛立ちを隠せず投げやりにベッドへ沈むと
その柔らかい枕を思い切り叩きつけた。
・・・・こんなとこ、あいつに見られたら
きっと馬鹿にされんだろうな・・・・・
黙ってあいつから逃げて
結局違う奴に捕まって閉じ込められてるなんて
そんなの知られたらきっと・・・・・
「おや? 無様な事になってるじゃないか」
そう言って嘲笑うあいつの顔が目に浮かんだ。
ぅがーーー!!むっっかつく!!!!
1人で想像して腹を立てると
なんだか虚しくなってきた。
なんか・・・また眠い・・・・・
この時の俺は、苛立ちの方が強烈で
自分の身体の変化に気がつけなかった。
いつの間にか襲ってくる眠気に逆らえず
また堕ちるように闇へと引き込まれていく。
ちゃんと向き合わなきゃいけない
そんなのとっくに分かってる
それでも、怖い・・・・・
もう、誰かと向き合う事が
怖くてたまらないんだ・・・・・
失う恐怖に怯えて
自分を抱き締めて身を守るしかない
大切な人を
二度と、失わないように・・・・・
コツ、コツ、コツ、コツ・・・・
その夜、闇に乗じて
暗闇の中 現れたのは
和也を抱き抱え
静まった廊下を雄偉に歩く
貴族の姿だった・・・・・
