BLです。


ご注意ください。









薄暗く
ぼんやりとしか見えない相手の顔

でも、今どんな表情で
自分の事を見ているのか
手に取るように分かった。


あの頃、自分を見つめていた瞳は

忘れたくても
忘れることなんて出来ない。



「ずっと、君に会いたいと思ってたよ」


嬉しそうに、でも静かに
語るように話し出す声は


『ごめんっ・・・
  カズ!すまないっっ!!』


ずっと耳から離れない
最後に聞いたあの時の声とは違って
落ち着いていた。

いつも冷静な彼があんなに動揺したのを
見たのは、あれが最初で最後だった。



「ねぇ、それさ、今更良く言えるね
   俺はあんたに騙されてたんだぜ?」


「・・・・違う、違うんだっ
 すまないとは思っている・・・・
 でも、俺も嵌められていたんだ・・・」


「それは・・・誰に?」


「父、が・・・全て・・・
  俺も知らない所で動いていた
  君の、父親を消すために・・・」


「・・・あんたの父親の陰謀、か」


「でも、知らないとはいえ
君を傷付けてしまった事には変わり無いね」


そう言うと彼は顔で手を覆い俯いてしまった。


後悔の念を纏って 
わざわざ俺に会いに来たのか

ほぼ、俺の思い描いていた筋書き通り・・・

でも、彼の証言だけでは
証拠にはきっとならないだろう

この人が証言してくれるとも限らない
自ら危ない橋を渡るような人間でもないし


やはり、全てあの時の俺の過ちが・・・・


どうする事も出来ない事実を
何度も突きつけられた。


結局また、ココでも何も変わらず・・・


わざわざ捕まってみたけど収穫無し

息子の言葉なんて言質にもならない


「分かった。
 俺の用は済んだからもう帰りたいんだけど」


何処だろうココ・・・・
移動した時間を考えても、国から出ては居ないはず・・・・


帰り方を思案していると
戸惑うように名前を呼ばれた。


「カズ・・・君はもぅ、俺と会いたいと
  思ってくれてはなかったんだね・・・・」


「はっ、今更そんな事思うわけ無いだろ」


「そうか、あんな事があったんだもんな・・・・でもっ俺はおまえとまた!」


立ち上がる事の出来ない彼が
必死で縋るように俺に手を伸ばすのを
冷え切った目で見ている自分に気付く。


あぁ・・・・

あの頃の余裕がある大人だと思ってた彼は
全て、くだらない感情が見せた
まやかしか・・・・


「俺は、もう2度と貴方に会いたくない」


「カズ・・・・」


貴方の事はもう・・・・

だからそんなに傷ついた顔とか
しないでほしい・・・・・


悲壮感に溢れた瞳は
俺の事をまだ諦めていない。

それでも何の感情も見せずに
黙って、ただ見つめていると
とうとう諦めるように項垂れ
「そうか・・・・」
と呟いた。


「それじゃあ・・・」


自分をここから返して欲しい
という言葉は発する事が出来なかった。

また顔を上げた時の彼がさっきまでとは
別人のような顔になっていたから・・・・


「じゃあ、しょうがないね・・・」


「えっ・・・!!!!」


突然後ろから何かで口を塞がれた。

抵抗する間も無くあっという間に
自由を奪われる。


意識を手放して行く時

一瞬見えた彼の顔は

楽しそうに、微笑っていた・・・・・














こんにの(*゚∀゚*)
久々の貴族シリーズでした。
なんか本編の貴族探偵が謎だらけで気になって
続きが書けなくて(笑)
でも本編とこの話は別物なのでサクサク進めていきます!
そんなに長くならないように(笑)