「誤解」
いつもと同じ日常なんかつまらない。
そんな言葉を耳にしたりすると
なんて贅沢な言葉なんだと思う。
俺にはその日常すら憧れる。
「そう言えばさー…」
突然、相葉さんが思い出した事を話出そうとしたけどいきなりニヤニヤ笑い出した。
なんだかキモイ…
「何よ?気持ち悪い…」
「え⁈…いや、さぁー
一昨日翔ちゃんと飯食ったんだけどさ~」
「あ、一昨日だったんだ。」
「うん。あの人の予定が急に空いてさ、急遽?」
「ふーん…忙しいんだね。相変わらず…
それで?」
「そしたら…あっそーだ!翔ちゃんが
次何時にする?って言ってたよ!」
相変わらずイキナリ話が飛ぶ相葉さんの
質問にそーだなぁと思いながらテレビに映る
今話題の彼に目を向ける。
櫻井翔は俺達より一つ年上の兄貴的存在…
って言っていいのかな?
日本中のほとんどの人が知ってる位に有名なアナウンサーだ。
こないだアナウンサーランキングみたいなので1位になったみたいだ。
そんな彼とはあまり会えないけどそれでも時間を作って会いに来てくれたり
ひと月に一度ジムで一緒に汗を流している。
毎日ほぼ引きこもりのような俺に体を動かすきっかけを作ってくれている。
「翔さんが作れる時間に合わせるから何時でもいいんだけど…夜だなぁ」
そう言うと、その言葉を聞いた相葉さんが
「ぶっ!」
と思い切り吹くもんだからちょっとイラっとして
「きたねぇなぁ~なんだよっ!」
とキレてみるが未だ笑いが止まらないようだ。
「ごめんごめんっ!こないだの話
思い出してさ~」
「何よ?」
相葉さんの謝ってるようで謝ってない謝罪よりもその内容が気になる俺を見て
相葉さんは楽しそうに一昨日翔さんに聞いた話を話し出す。
「いや、さ…毎月二人きりでジム行って、何時もひと目につかない遅い時間だしさ…なんか話題になってるみたいだよ?」
「…どんな?」
まさか噂されてるのかと嫌な予感がしていると
ニヤニヤと相葉さんは
「きっとあれは櫻井翔の恋人で、同性同士
だからお忍びデートなんじゃないかって」
まさかの話に呆れると同時に危機感を持つ。
「翔さんに言っておいて。
もう二度とそのジム行かないって」
ちょっとキレぎみに言った。
冗談じゃない!何処から見たらそんな風に見えるのか…
それに、有名人といて話題になってしまうとマズイという気持ちを既に持ってしまった俺に相葉さんが
「違う違う!そーゆーんじゃなくてっ!」
と慌てている。
「あまり同じところに居座るのはやっぱりダメなんだよ…」
「うわーっまだ続きがあるんだって!」
でも相葉さん…
俺にはやっぱり普通の生活なんて
出来ないんだよ…
そんな俺の気持ちを察したのか相葉さんが
急に表情を変えていきなり腕を引っ張って来た。
俺はバランスを崩して相葉さんの方へ倒れこむといつの間にか相葉さんの腕の中にいた。
「っ…っなんだよ!」
「カズ、ゴメン!そんなつもりで言ったんじゃなかったんだよ。続きがあって…」
久しぶりにカズと呼ばれた。
いつもニノやニノちゃんと茶化した感じで呼ぶけど、真剣になるとカズと呼ぶ事が多いので必死さが伝わってくる。
俺が大人しく聞く体制になったのが分かると
「実はあそこのジムって翔ちゃんが知らなかっただけで結構ゲイの人達の溜まり場のジムだったらしくてさ。翔ちゃんもあまり女の人がいないからやり易くて通ってたんだけど、まさかそんな所だとは思わなかったから変えようか悩んでたって話だったんだ」
相葉さんが一気に話し、更にぎゅっと腕に力を入れて抱き締められた。
「だからそんな顔しないで?」
早とちりだったわけだが、相当な顔だったのだろう…つい、焦りで相葉さんに心配をかけてしまったのが恥ずかしい。
「なんだよ。早く言えよ…」
いつも素直になれないのは俺の方だ。
いつも相葉さんの優しさに甘えてしまう。
俺はいつになれば貴方の事を解放してあげられるのだろうか…