明日の記憶
「日常」②「ニノちゃんただいま~」
声をかけてみたけど応答がない。
あれ?と思いつつ
モニターだらけのデスクの周りを通って
座ってる側に回ると気持ち良さそうに
眠っていた幼馴染を見つける。
寝てると更に童顔な顔が幼く見えるんだよね
と微笑ましく見ていたら
「う…ん、んー…」
目を覚ましこちらに気付いたので
「ただいま♪」もう一度声をかける
「おかえり……ってお前んちじゃねーわ」
お決まりのツッコミを入れられるが
そんな事はお構いなく
「そんな事言わないのー
ほらっお店の春巻きとか持って来たよ~
どーせご飯食べてないでしょ?」
「…食べてない」
「じゃあ何か汁物作るからご飯食べよーよ」
「食べる…」
俺は目的の言葉を聞くと、さっさと部屋を後にしてキッチンに向かおうとする。
あ、でも…と思い振り返って
「そーいえば、今日のノルマは?」
と聞くとニノはニンマリして悪戯を思い付いたような顔で
「明日の夜は豪華な寿司でも買って来てよ」
「やった~☆」
上々の結果だったようだ。
明日はニノの好物の寿司屋に決まりだなー♪と
部屋を後にしてルンルンと食事の準備を始めた。
食事が終わるといつも決まってゲームだ。
TVのモニターを見ながら俺は今日の出来事を話すのが日課になっている。
その話にニノが時折りツッコミを入れながら
楽しい時間を過ごしていた。
でもね…
これが15年間…
ほぼ毎日繰り返されている基本スタイルなんだ。
あの日からもうすぐ15年になる…
もう、15年…
もうそろそろ解放されても良いんじゃないか?
だけど、打開策があるわけではない。
15年前のあの日になんとか戻れたら
この未来は確実に変わっているだろうと思う。
もうすぐやってくるあの日…
その日が近づくと決まってニノは
外出を控えるようになる…
夜中、うなされて起きている事を
俺はちゃんと知っている。
俺たちの人生に大きく深く関わる
あの出来事は…
今でも俺たちの未来に暗い影を落とす…