●日本建築と西洋建築の光環境の違い

反射を繰り返して光を採り込むイ云統的な日本建築に対して、現代建築に多い西洋建築においては、窓をある程度高い位置に設けて効率的に光を採り込み、室奥への採光性能を高める方法が一般的です。また、ひさしが小さい(あるいはない)ため太陽光が直接室内に入りやすく、上から下への光の流れとなります。床面の反射率が低く、天丼や壁面の反射率が高いこともこの傾向を強くしている要因です。これらの特徴は、現代においては机上の視作業を行うことが多いという点から見ると好ましい光の向きではありますが、伝統的な日本建築の光の流れとは異なるため、和室空間における光環境の特徴を踏襲しているとはいえません。では、和室空間における光の流れとはどのようなものでしょうか。

先ほど述べたように、日本建築において空からの光は、深いひさしに遮られて直接室内に差し込むことはありません。地表や濡れ縁に反射した光が、下から上に向かって斜めに室内に差し込むことになります。




さらに室内においても、床の畳の反射率が比較的高いのに比べて、砂壁や
本の天井は反射率があまり高くないため、下から上へ向かう光が強調されます。ただし、障子紙や木といった拡散性の強い素材を透過あるいは反射した光であるため、指向性の強い光はありません。この光環境は、机上で視作業を行うといった行為には不適切ですが、大の顔を見る場合には、明暗差や陰影の少ないやわらかな表情を創り出します。これは顔に凹凸が少なく、繊細な光の変化を好む日本人に適した光環境といえます。このような伝統的な日本建築の光環境を忠実に再現することは、現代のライフスタイルと相容れない部分があるため現実的ではありません。しかし、建築において和の空間がなくなることがないように、伝統的な和の光環境がなくなることはありませんので、最新技術を活かしながら、和の光環境を維持発展していくことが期待されます。

SunnylightーJapanのブログ