●日本建築における光の採り込み方
柑紙は、江戸時代のあかりに使われたのと同様に、日本建築においても障子紙などに多く使われており、外部と室内を区切りながら自然光を室内に採り入れることができる機能を持つ素材として重宝されていました。
障子紙に入ってきた自然光は、入射方向に関係なく様々な方向に拡散されます。すりガラスの場合は窓の外の様子かおる程度は認識できよすが、障千紙の場合はほとんどわかりません。このことは、内部空間を外部から独立しに場として形成するという効果をもたらしています。
明治以降にガラスが使われるようになると、雪見障子のように、内部と外部か視覚的につなげることのできる障子が登場します。これは障子の一部に透明ガラスを入れたむので、空からの直射光を遮ることでやわらかな光環境を却持しながら、外部の様子をうかがうことができるものでした。摺(すり)上げ障子は雪見障子の一種ですが、障子の下方にガラスをはめ込み、さらに室内側レヒ下に移動可能な小さな障子を組み込んだものです。
外部と視覚的なつながりを持ちたい場合は小さな障子を上げて透明ガラスの状態とし、そうでない場合は小さな障子を下げて通常の障子の状態にしておくことができる、フレキシビリティの高い採光装置となっています。
また、反射を繰り返して太陽光を建物内部にやわらかく採り込む手法も、
日本建築の特徴の一つです。日本建築は大きな屋根と深いひさしが特徴ですが、これは太陽の直射光が建物内部に届くことを防ぎ、さらに軒裏は地表や濡れ縁で反射した光を再度反射させる反射板としての機能を持つことになります。
このように何度も反射を繰り返すことで、自然光の強さはかなり弱まり、窓に障子がある場合はこの光をさらに拡散して室内へ伝えることになるため、日本建築の採光性能はあまり良くありません。しかし、このことが室内に繊細な光のグラデーションを創り出し、独特の落ち着いた雰囲気を醸し出す要因となっているのです。