誰にもある

幼い頃の忘れられない思い出は


虹の雫のように

心の中の隅っこでキラキラと光る

小さな宝物

 

その一粒一粒を

思い出すたびにちょっぴり心が切なくなって

ほろりと涙がこぼれそうになる


そんな幼い女の子の愛情物語


*

*

*

 


女の子が幼稚園の年長さんになった

頃のことです


 

その日の幼稚園からの帰りは

 

お母さんがお仕事が休みだったので

 

幼稚園バスを降りるところまで迎えに来て

くれていました。

 

 

女の子とお母さんは二人で

 

弟の保育園のお迎えに行く前に少し寄り道をしました

 

 

もうすぐ女の子のお誕生日なので

 

町のショッピングセンターへ行って

 

お誕生日のプレゼントを買ってもらうことになり

 

 

女の子はとても嬉しくて

 

お母さんと手をつないでスキップしながら

 

ショッピングセンターのおもちゃ屋さんへと向かいました

 

 

おもちゃ売り場に行く途中にはオルゴール屋さんがあったので

 

お母さんと女の子は立ち留まり

 

ガラスケースの中に飾られている素敵なオルゴールを一緒に眺めました。

 

 

たくさん並んでいるオルゴールの中で

 

ひと際美しくてきらきら光っている

 

白い宝石箱のようなオルゴールに

 

女の子は心を奪われてしまいました。

 

 

店員さんがショーケースからそのオルゴールを出してくれて

 

その白い宝石箱のようなオルゴールの

ふたを開いて

 

ねじを巻いて音を聞かせてくれました。

 

 

そのオルゴールからは

 

『白鳥の湖』のメロディーが流れてきて

 

盤の上で小さなバレリーナのお人形が

くるくると回りながら

 

メロディーに合わせて踊るのです。

 

 

女の子はそのオルゴールが可愛くて素敵で

 

何度もねじを巻いてもらって

 

小さなバレリーナのお人形がくるくる

回りながら踊るのを

 

ずっと見つめていました。

 


女の子は


おもちゃよりも断然この素敵なオルゴールが

欲しくなってしまいました。

 

 

だけど、、、

 

このオルゴールは高価なものだとわかるので

 

これがほしいとは言えませんでした。

 

 

だから女の子はお母さんに

 

「このオルゴールはわたしが大学生になったら

アルバイトして自分で買うね。」

 

と言ってあきらめようとしました。

 

 

その言葉を聞いたお母さんは

 

いつも我慢ばかりさせているのに

 

お母さんを困らせないように

と、わがまま言わず

 

耐えてくれている女の子を不憫に思い

 

 

確かに少し予算オーバー気味だったけれど

 

「わかった、お誕生日のプレゼントはこれにしよう!大丈夫だよ!」

 

と女の子に言いました。

 


女の子は

 

「え?ほんとにいいの!?お母さんありがとう!」

 

と喜びいっぱいで、嬉しさが溢れてきました。

 

 

その日から

 

女の子にとって1番の宝物になったことは

 

いうまでもありません。

 

 

後日、この出来事を

 

お母さんが田舎に住んでいるおばあちゃんに

 

電話で話しました。

 

 

「あの子はそんなにオルゴールが好きだったのかい?」

 

と言って、


おばあちゃんまでお誕生日の日に合わせて

 

お人形の姿の陶器のオルゴールを送ってくれました。

 

 

お人形の姿をした

陶器でできたそのオルゴールも

 

ねじを回すと

 

メロディーに合わせてお人形がゆっくりと回る

とても素敵なオルゴールでした。

 

 


。。。幼稚園の年長さんのお誕生日のときに


お母さんとおばあちゃんが

 

プレゼントしてくれた二つのオルゴールは

 

女の子にとって大切な大切な


宝物のオルゴールになりました。

 

 

 大人になった今でも


2つのオルゴールは女の子にとって

大切な宝物のままです。



そして時々、そのオルゴールのネジを回して

音色を聴いてみるのです。

 


メロディーを聴きながら目を瞑れば


あの頃のお母さんやおばあちゃんの


笑顔や優しさが思い出されてきて

 

女の子の心はあったかくなるのです。