$雑食食堂

★★★★☆

デビュー作「月に囚われた男」が評判となったダンカン・ジョーンズ監督の第2作。シカゴで乗客全てが死亡する列車爆破事件が発生。犯人捜索のため政府が遂行する極秘ミッションに、米軍エリートのスティーブンスが選ばれる。事故犠牲者の事件発生8分前の意識に入り込み、その人物になりすまして犯人を見つけ出すという作戦で、必ず8分後には爆破が起こり元の自分に戻るスティーブンスは、何度も「死」を体験するうちに次第に作戦への疑惑を抱きはじめる。(http://eiga.com/movie/56216/から)

いわゆる「ループもの」と言われるストーリーを軸に、それを解き明かす主人公の状況も不明確で…という謎だらけで物語が進むが観る者をおいてきぼりにすることなく、主人公が解き明かしていく。
ホントに設定がややこしいのでここまでスムーズに観客に説明出来るのか!!と驚くほど。

一方で物語自体も非常に見応えがあり、楽しめる。過去の事件を解決する(=事件を無かった事には出来ない)&何度でも過去に(シミュレーションとして)戻れるという設定だと物語に緊迫感が無くなりそうだが、テロリストは次の大規模な爆破を企てているため、一刻も早くミッションの中でテロリストの手掛かりをつかまなければならない。
なので「8分間のミッション」を何度も観させられている観客も、リミットが迫っている事を意識せざるを得ない。

一方で謎なのが主人公スティーブンス大尉を取り巻く状況だ。
謎めいたカプセルに閉じ込められた彼は、空軍パイロットである自分がこんな妙な任務に就いた覚えもなさそうなのに、強制的に「最期の8分間」の世界に転送される。
徐々にそれらの謎も解決していくのだが、この映画は仕掛けられた謎の数々よりも、エンディングがとても良い。

ネタバレなので詳しく書けないのが残念だが、最後のミッションに挑んだ時の主人公の決断がこれまでの緊張感あるサスペンスを一気にロマンチックにさえしてしまう展開が心地よかった。
一つのテロ事件を通して、一人の人間の組織に対する向き合い方、何気ない日々のかけがえのなさ、も丁寧に描いていてただのミステリ/サスペンスに留まらないところが魅力的だった。