★★★★
「パッチギ！」「ROOKIES 卒業」などで知られる高岡蒼甫が、初主演を務めるラブコメディ。共演に田畑智子、「AKB48」の小野恵令奈。「純喫茶磯辺」の吉田恵輔がメガホンをとる。百瀬と佳代のカップルは、お互いに説明できないわだかまりを抱えたまま、だらだらと同せい生活を続けていた。そんなある日、佳代の中学生の妹・桃が夏休みの間を利用して2人の家に転がり込んでくる。桃の大人びた素振りに動揺する百瀬に対し、佳代は日に日に不信感を募らせていく。(参照:http://eiga.com/movie/55263/)
面白かった!!『１３人の刺客』ですっかり好きになった高岡蒼甫と、今人気のAKBのメンバーのダブル主演ラブコメ映画と言う事でいかにもな層の女性だけを狙った映画かと言われれば、全く違う。逆にこのような印象で劇場で足を運んだ人も多かったのではないだろうか。
僕はDVDになってから観た口なので、このようなギャップがある事はTwitterなどでも散見していた為、ある程度覚悟を持って臨めたが、それでも結構衝撃的な映画だった。
去年評価が高かった恋愛映画は音楽PV監督、マークウェーバーが撮った『(500)日のサマー』だが、こちらはあの手この手でシーンごとに撮影手法を変えたり、必要に思えないアニメーションを挟んだりと、作品全体に蔓延する「オシャレな映画を客に見せている感」がどうにも鼻について、尚且つヒロインの傍若無人っぷりに憤慨し、全く楽しめなかった記憶があるが、本作の方が魅力は断然上。
登場人物は誰もが恋愛で相手の事を思いつめて、はたから見れば馬鹿馬鹿しい行為を平気でやってのけてしまう。その描き方が非常にリアルに感じられる。何故かと言うと出演者の語り口と、会話の内容が非常に自然で一度はこのような遣り取りをした経験がある!と思えるからだ。つまり脚本が抜群に良い。
主人公の高岡蒼甫演じる釣り具の店員は自身のイラスト入りの４００万円をつぎ込んだ改造車を乗り回して、職場の後輩や地元の後輩相手にいまだに先輩風を吹かすちょっと(いや、かなり)痛い三十路。
そんな彼が小野恵令奈演じる彼女の妹に心ときめかせ、小野の携帯の留守録メッセージに電話の催促を入れまくる。しかもメッセージの内容が気に喰わないらしく何度も録音しなおす。んでもって一人で照れてる。もう痛々しいとかを軽く超越して、怖い。
しかしその｢怖さ｣の元を探ると、自然と自分の数少ない恋愛経験に行きつく。なんだか僕自身の黒歴史をまざまざと見せつけられたようで鑑賞中は高岡の行動を笑い飛ばせず、終始半笑いだった。
しかしこのシチュエーションに１００％感情移入できない要素が一つ、それもかなり致命的なものが僕自身にあった。最初から最後まで、小野恵令奈のことが好きになれなかったのだ。
鼻にかかった、と言うよりは最早鼻声で甘えた声を出し、彼女である姉の前でも平気で高岡に無邪気に甘える小野はただの｢男を騙す怪物｣にしか見えなかったし、何より彼女役の田畑智子が魅力的すぎて彼女をフる高岡の心境が理解できなかったからだ。
４００万もの大金を車の改造につぎ込む高岡を黙認し(まぁ彼女は１１０万だと聞かされていたらしいが)、受け入れる母性溢れる田畑は高岡から別れを切り出されると、高岡の自宅(のドアノブ)に弁当を届けたり、合鍵を無断で作ってシャンプーの詰め替えから冷蔵庫の補充までするなんとも面倒見の良い女性だ。
高岡は劇中で「ストーカー行為だ!」と激怒して遂には警察に届けてしまうのだが、もとから同棲をしていた勝手知ったる仲なんだから別に良いじゃん。と思えてしまった。
というか、旧友からマルチ商法を勧められ騙されそうなんだからそこはお前、救ってやれよマジ!!と「勝手にしろ」なんてよくこんな出来た彼女に言えるなホント!!と怒りが腹の底から湧きあがってきてしょうがなかった。
実はこの文章、彼女のスト―キングに関するある部分を意図的に排除しているのだが（ネタばれなので）、「まぁ俺は始めからアイツがあやしいと思ってたけどね!!高岡!この野郎」と言ってやりたい気分に、勘の良い人はラストでなるだろう。
高岡は小野を想い、田畑は高岡を想い、小野も実は序盤で好きだった先輩相手にストーカーまがいの事をしている。血は争えないと言ったところか。
なんにせよ「思い人とそう簡単に恋が成就するわけねーだろ!」という監督のキツイが、確かに正しい主張が見え隠れするこの作品は、主演の３人を暖かい目で見守っている。
高岡の行動の一部に感情移入できなかった僕が「面白い!!」と言い切れる理由が、ラストシーンにある。是非見ていただきたい一本。
【補足】
小野恵令奈は今作の主演をきっかけにAKBを脱退したらしい。折角メンバーの名前を覚えたと思ったのに…
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