$雑食食堂

★★★★

「殺人の追憶」「グエムル/漢江の怪物」のポン・ジュノ監督が手がけた3年ぶりの長編。国民的人気女優のキム・ヘジャ、5年ぶりの映画出演となるウォンビンが親子を熱演する。貧しいながらも幸せに暮らしていた親子であったが、ある日1人息子が警察に拘束されてしまう。殺人事件の容疑者にされてしまった息子の無実を信じ、孤立無援の母は悲しむ間もなく、たった1人で真相に迫ろうとするのだが……。(参照:http://eiga.com/movie/54360/)


以下、若干ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」に関して触れます。未見の方はご注意を。念のため結末部分は反転します。↓


ポン・ジュノの監督作品は「殺人の~」しか観ていないが、正直つまらなくて途中で何度も睡魔に襲われた。
なんだか殺人事件の捜査をしている刑事は基本取り調べは拷問だらけだし、頼みの綱はFBIの最先端科学捜査のみというへっぽこ具合。実話をベースにしているから「犯人が捕まらない」というオチはしょうがないのかもしれないが、いくらなんでもカタルシスが無さ過ぎる。「あちゃー」としか言いようのないオチには今までの2時間を返してほしいとさえ思った。

以上で「殺人の追憶」に関しての記述は終わり

なんだか韓国警察の機能のしなさっぷりをポン・ジュノは強調したいのか、今作も警察は基本無能。
しかしところどころ首をかしげてしまうところはあるにせよ、この「母なる証明」は十分楽しめた傑作だった。

「殺人~」との共通点は
●加害者に何らかの知的障害がある。
●上記の加害者は「誤認逮捕」の可能性が高いが、警察側はそれを基本無視。

という何とも理不尽な設定のなかキム・ヘジャ演じる「母親」が東西奔走するのだが、ポン・ジュノの演出が独特なので好き嫌いが結構別れる作品だ。

話の内容はどこまでもシリアスな方向性なのに、ところどころ狙ったような滑稽な演出を挟んでくる。
僕はDVDでの鑑賞なので遠慮なく爆笑したのだが、劇場で観ていたら笑っていいのか悪いのか分からず戸惑っている内にストーリーが進んで行ってしまいそうだ。

それくらい独特な間と凝ったカメラワークで観る人を悩ませる。「果たして笑っていいシーンなのか」と。

しかし無事(?)兵役を終えたウォンビンの映画復帰作がこの作品というのも凄い。
かつては「韓国四天王」なんて日本でももてはやされていた彼が知的障害を持つマザコンの殺人容疑者の役をしている。日本で言う福山雅治が障害者の役を演じるようなものか(よく分からないたとえ)。

更に特筆すべきは主演のキム・ヘジャに役名がついてない事。
どの人物も「オモニ」(おばさんやお母さんと訳されていた)と彼女の事を呼び、ラストまで名前が明かされる事が無かった。
最早彼女は一人の人物ではなく、「母親」という概念であり、それを作り上げようとしている監督の意気込みが伝わる設定だ。

劇中では無い金をチンピラに巻きあげられたり、証拠集めの為に不法侵入をしたりと更にはネタばれになるので言えないある事までやらかしたりととにかく「息子を救う」パワーに観客は圧倒される。
そしてそこまで母親を駆り立てるものにもある一つの原因があるのだ。
その秘密が明かされるシーンの迫力も凄まじい。

一方で殺された被害者の経済状況も一般的な日本人から見ればかなり悲惨なもので、彼女が殺されることによって韓国の貧富差が表現され、華やかな音楽やイケメン俳優だけで無い韓国の一面を垣間見れる事が出来る。

監督は国際的な評価を受けているからこそ、このような韓国の暗部を世界に伝えたかったのかもしれない。

そして全てが本当の意味で終わるラストシーンは頭を殴られたかのように衝撃的で、母の所作を一部始終淡々と撮り続けるカメラワークも見事。

しかし韓国人はセックス中にしりとりをして遊ぶのが普通なのだろうか??物凄くシュールで頭に焼きついてしまった。

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ブルーレイあるのか!!TSUTAYAにはDVDしか無かった…