$雑食食堂

★★

年末にアップした記事で僕はこの作品を(日本語ラップでは)30位というまぁその年の平均より少し上的な立ち位置に順位付けたのだが、日本語ラップを扱うサイトでは国内最大級の「Amebreak」ではなんと4位!!!当ブログでも上位に挙げた環ROYやECDの作品よりも上位だと言うことに少なからず衝撃を受けた。

そして僕が愛読している音楽雑誌、『MUSIC MAGAZINE』の年末ランキングでもたしか本作は5位だか4位にランクインされていた。
ようは専門家から見れば本作は今年のトップクラスの日本語ラップ作品、と言うことになるらしい。

アメブレイクの対談では、発表されたランキングが「保守的」であることを自負してはいたが、しかしこの作品が年間ベスト級であるとは到底思えないのも事実だ。なんというか、いかにも「ギョーカイ的」な内輪ノリを見せられた気分になった。

基本年間ベストに挙げた作品の記事は書くまいと思っていたが、以上のことがきっかけで本作への印象も少し変わったため、記事にすることにした。

ランキングでの項でも書いたが、やはりニトロの衰えはビートへの瞬発力の低下だと思う。かつてはビートに乗ると言うよりも、もはやビートを食っていたSUIKENのラップも、M12を聞く限りだと退化が著しい。BESではないが「ビートとラップがまるで水と油」なのだ。

この曲で彼は90年代当時の悪自慢をラップするのだが、肝心の犯罪描写部分(キセル乗車と偽造テレカ??)はボーカル部分が無音で修正されているため言葉のリズムが殺され、それが更にラップを下手くそに聞こえさせていて散々たる出来。(そもそも10年メジャーでやっていて、修正される歌詞に関してのここまでの配慮不足ってどうよ??)相変わらずチャンネル5ではひとり謎の進化を遂げたK-BOMBがこの曲を一人で持っていった印象だ。

主役に話を戻すと、スイケンほどではないがDABOもビートへのアプローチに瞬発力が無くなった。
ウィスパー気味のラップでも10年前の「JUST PLAYIN'」などでは巧みなラップを披露していたのに本作ではただダラダララップしているだけにしか聞こえない。
あのスローだがタイトでもあったラップはどこに行ったのだろうか。

しかし言葉選びに関してはやはり天性のものがあり、各曲のフックは恐ろしいくらい耳に残る。

ツイッターでもRTされまくっていた「ケツにマシンガン」や「デッパツ進行」よりも、個人的には読書家らしく敬愛するサンテグジュペリを引用したM2の「一撃MCサンテグジュペリ」という意味不明だがゴロが良いフレーズが特に耳に残った。

だが「無意味な歌詞」がカッコ良かったニトロの面影はこのようにフックでは見え隠れするもののヴァースには存在していなく、中途半端なふてぶてしさが残る彼のラップスタイルを見苦しいと切り捨てる人が少なくないのも分かる(個人的には許容範囲だが)。

さらに急に他人への感謝の言葉を述べ出すM9なんかを収録してしまう辺りもタチが悪い。スキルがあれば「バラエティにとんだ作品」と評されるのだろうが、このスキルでは「軸がぶれた作品」と言われるだけだろう。

客演が華やかなM7~9のキャッチーな流れが無ければ聞き通すのは難儀だが、逆にこの流れが際だっていて良かった。

デッパツ進行は正直リードトラックだと言われなければ気付かない地味な出来。

しかし「DABOの技巧を凝らしながらも小粋で軽やかな言語感覚と“デッパツダンス”のようなギミックによって、フロア・ライクかつキャッチーという、垢抜けたフロア・バンガー。」とはAmebreakの弁。
そ、そうですか…↓



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