$雑食食堂

★★★

2010年12月8日発売の9thアルバム。

その奔放な音楽性とは裏腹に、Dragon Ashはとても真面目なバンドである。

良い意味で堅苦しい言い回しの歌詞や、「邦楽におけるヒップホップとロックの違和感のない融合」を熱心に探求してきた3rd~4thアルバムの流れや(それが結果的にZEEBRAのラップスタイルに酷似してしまったとはいえ)、ラテンミュージックでの同様の努力を見せてきた6th~8thの流れを見れば(聞けば)お分かりいただけると思う。

そしてこれまで通り実直に音楽性を考え抜いた彼らの次の手が、「ミクスチャーロックの復権」を狙った本作、その名も『MIXTURE』だ。

「ミクスチャーロック」はその名の通り他ジャンルの音楽をロックに取り入れるスタイルなので、定義付けるのは難しいが、ここのところは目立ったフォロワーもおらずジャンルとしては衰退していっている印象が強い。
多くのバンドが激しめのラップを取り入れるので年を重ねるごとにパフォーマンスがしんどくなるジャンルなのは間違いない。
その点kjは歌も積極的に取り入れていれた(というかZEEBRAにディスられた反動からか)スタイルで、ミクスチャーバンドの「老い方」も提示した感が「ラテン路線」では強い。

このままのスタイルでも十分かと個人的には思っていたが、やはり前作までのラテン路線の過小評価や、ミクスチャーの衰退ぷりを見てか、「復権」を狙った本作の制作に取りかかったのだろう。

そのためか10-feetのTAKUMAや山嵐のSATOSHIなど、日本を代表するミクスチャーバンドの客演が目立つ。一方でRIP SLYMEのPESやm-floのVERBALなどのヒップホッププレイヤーを呼び込むなど、「これこそがミクスチャーロックだ!」と言わんばかりの布陣だ。

ただそれらの要素全てがプラスに作用しているかと言われると首を傾げざるを得ない。
4th期の荒々しいだみ声気味のヴォーカルスタイルを用いたM3やM8は同じようなフレーズの繰り返しがグルーブが生まれることもなく、従来の歌詞と見比べると「らしくないな」というのが本音だし、前述のTAKUMAを招いたM4ではkjの歌詞に「相棒Come on say it!」とあるが、いつからTAKUMAが相棒になったのか…これでは先行シングルにも収録された「TIME OF YOUR LIFE」の歌詞の感慨深さが台無しになってしまう。

しかしアルバム全体を聞いてみれば不満点は上記くらいのもので、ほかは概ね満足できた。
PESとVERBALを招いたM9もラテン色の強かったシングルバージョンでなく本作ではガッツリミクスチャー。シングルバージョンも好きだがアルバムに馴染んでいるこのバージョンも捨てがたい。

全体的にスクラッチ音も増えていたのでBOTSのファンは耳を貸すべき。

ただやはり他のミクスチャーバンドなら納得できる内容でも、Dragon Ashにはやはりより良い作品を作ってもらいたいと思うのが長年のファンとしての正直な感想だ。

「直球ミクスチャー回帰」以外の新たな選択肢も見てみたかった。

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