$雑食食堂


★★★★★

ヒップホップほど好き嫌いの分かれるジャンルもないのではないでしょうか。

良くも悪くも演る側も聞く側も頑固な職人気質が多いから、それぞれにテリトリーを作ってしまう。
そんなジャンルでガグルは最も賛否が分かれるグループの一つだと思います。

軽く世界レベル越えのMITSU THE BEATSの作るトラックは誰もが誉め讃えるが、HUNGERの特徴あるラップには苦言を呈する人も少なくないでしょう。
実際HUNGERは1stの時のフロウと現在のそれとは全く違う。テンションバリ高で繰り出されることばの数々に驚愕した時のような衝撃は、今はないです。
しかし淡々と語るように韻を踏むスタイルは一聴して退屈に聞こえるが、当時よりも格段にビートにマッチしている。
それに海外のJAZZYヒップホップを聞かれる方はお気付きだろうが、HUNGERの現在のラップスタイルは海外直輸入てしょう。

当時のフロウを捨て、海外のヒップホップの魅力を詰め込んだフロウにした、HUNGERの英断に拍手を送りたいです。
そんな洋JAZZYヒップホップをそのままに日本語に変換したようなM-2は、気持ち良さが半端じゃない。MITSUの美しくも力強いトラック、Mu-Rの要所要所のスクラッチ、HUNGERの高速めのラップを聞けば確実にやられる。
クラブの雰囲気に直結した楽曲も彼らの魅力の一つだ。M-13、14等は秀逸な歌詞にも是非耳を傾けてほしいです。
他にも多種多様なトピックが彼らの長所で、ラブソングであるM-3、12も聞きごたえ抜群。ジャジーであるから浮き彫りになるベースとドラムの重低音が織り成す快楽と、映像的なHUNGERのラップに身を任せてほしい。

当然彼らは「洋楽的なおもしろさ」以外にもしっかり「日本語ラップ的なおもしろさ」も兼ね備えている。
M-5の畳み掛ける高速ラップや、新旧スターMC集結のM-9は本作のハイライトだろう。
そしてすばらしい楽曲に身を任せている間に、最後のM-16に辿り着く。この曲はガグル史上最高傑作とも言える曲で、是非歌詞カードに目を通してHUNGERの「説得力」に感動してほしい。

無為に他人を傷つけず、POPに媚売りもしない。綺麗な正三角形を描くグループとしては彼らが最高峰なのではないでしょうか。

3-PEAT/GAGLE

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