先日の初級コース、マテリアメディカの授業で、私はLach.を担当しました。
このレメディの原材料は、アメリカ大陸最大級の毒蛇、クサリヘビ科のブッシュマスターの毒液です。
ホメオパシーレメディの中で「蛇」のレメディは大きな存在です。
いくつもの蛇のレメディがあります。
CHKでは4年間で4つの蛇レメディを学ぶことになっています。
授業では、まずは、「蛇」のイメージを言ってもらいました。
蛇に対して、魅力を感じている人もいますが、たいていの人は嫌悪感を持っています。
“締め付けられそう。 執念深い感じ。 冷たくヒヤッとした皮膚の感じが気持ち悪い。
くねくねして、気味が悪い。 美しいと思う。 出会うと運が開けそう。“
などでした。
そのあと。従業では、ブッシュマスターについて調べてきたことを発表し、画像を見て、Lach.の症状を想像していきました。
ブッシュマスターは湿度の高い熱帯雨林に住んでいます。
日没から夜間にかけて活動する夜行性。
待ち伏せタイプの狩りをします。
齧歯類(ねずみなど)などを主に食べますが、獲物が来るとサッととびかかって毒を注入します。
獲物が死んでいるのを確認してから、飲み込みます。
ブッシュマスターの毒は、赤血球を破壊し、血を止まりにくくするため、かまれると大量出血死します。
毒が静脈に入ると心臓の神経に入り即死します。
獲物以外に対してはおとなしく、原生林の奥に住むため、人をかむようなことはめったにありません。
人に捕獲されても人からの餌は絶対に食べず、死んでしまいます。
蛇のイメージ。
ブッシュマスターの画像。
ブッシュマスターの生態。
これらの情報から、Lach.というレメディが持つ症状?
想像できますか?
Lachの最も有名な精神症状は、おしゃべり、傲慢、疑い深さ、嫉妬などです。
これらは、レパートリー(レメディ検索辞書)では大きなルブリックス(項目)として出てきます。
初級コースでは、入学して半年たったころから、この本を開き始めます。
皆さん、もう待ちきれないといった雰囲気でレパートリーをめくっていました。
どのルブリックスにもいくつものレメディが並んでいます。
すでに習ったレメディも出てきて、楽しいやら、びっくりやら。
おしゃべり:Loquacity といえば、Phos(燐)が有名。外国語の習得も得意です。
傲慢:Haughty といえば、Lyc(ひかげのかずら)でならったばかり。自信がないくせに、エゴが強くて傲慢だったりもする、知的でひ弱なタイプ。
疑い深さ:Suspicious といえば、Ars(砒素)。健康や財産に対する不安が強い、奪われることを恐れています。
嫉妬:Jealousy といえば、Nux-v(マチン)。競争心が強い野心家です。
今まで勉強したレメディの復習にもなりました。
インドの巨匠ラジャンサンカランは、「性的にも自分より有利なものを持っているライバルと競争しなければならない人の状況」だといっています。
たとえば、若いガールフレンドのいる夫をもつ更年期の女性のような。
手足のない蛇のような悲しみと口惜しさ。
でも強烈な毒をもって彼女は対抗しようとします。
それは、才気煥発で人を操るような舌鋒の鋭さかもしれません。
ギリシャの巨匠ヴィソルカスは、「沸騰したやかん」のような人だと表現しています。
煮えたぎった蒸気を解放しなければ、自分が壊れてしまうような人。
Lach.の人は、暑がりで熱に弱いです。
太陽の熱によって、破裂しそうになるズキズキする頭痛。
生理も、始まる直前が激しい不調で経血が始まったとたんに楽になります。
経血が止まる、更年期に悪化します。
生理でも、下痢でも、鼻時でも、排尿でも、とにかく排出によって症状が好転する人。
蛇の特徴は、首が弱点だということ、そして、脱皮すること。
Lach.の人は、首のまわりの圧迫を嫌います。
寒くても胸元まで開いた服を着ているような人。
脱皮前の窮屈な苦しさを反映しているのでしょうか?
身体を締め付けるようなタイトは服も苦手です。
数年前、インドのサルカー先生をCHKの国際セミナーにお呼びしましたが、「蛇に噛まれたときに大切なことは、患者を寝かせないこと。寝ている間に毒がまわってしまうからね。ほっぺたをピシャピシャ叩いて眠らせないようにするんだよ。」と話されていたのが印象的でした。
サルカー先生は、だから「蛇のレメディの人は眠るの悪化する。」と教わりました。
Lach.の人は睡眠で悪化します。
睡眠後の悪化。朝も悪いです。
身体の部位では、心臓や循環器に問題が起きやすく、心臓がある左側に問題が起きやすいことも特徴です。
扁桃腺の炎症も左側。卵巣も左側に症状が起きます。
反対に右はLyc.(ひかげのかずら)やApis(ミツバチ)です。
ホメオパシーでは、頭痛のレメディも、生理痛のレメディも、喘息のレメディも、リュウマチのレメディも、ありません。
その人の全体へのアプローチです。
一番つらい主訴とともに起きるそれ以外の症状。
症状が起きやすい部位。
Lach.は女性生殖器、心臓、循環器、血液、左側。
何かきっかけはなかったか。
Lach.は、更年期、失恋、激しい感情、口惜しさ、太陽の熱・・・などで発病します。
どのようなことで、悪化または好転するのか?これは最も大切な情報です。
Lach.では、悪化は、睡眠・熱・衣服の圧迫や接触など・排出の遅れや阻止。
好転は外気・分泌・冷たさなどです。
健康なつもりで生活していたが、ある日健康診断で引っかかって、精密検査。
病名がついてその病名に対するピンポイントでの治療が始まった。
その日以来、病人としての生活が始まる。
こういったこと、よく聞く話ですね。
そして、その人が健康かどうかは、すべて検査結果が決めます。
患者さんからの情報は、医師にはあまり必要なものではありません。
でも、ホメオパシーはこれとは真逆です。
その人が感じる不都合や違和感をじっくりお聞きして、その人全体に似たレメディを探していきます。
その人が良くなっているのか、そうでないのかは、その人が感じ、観察した事実頼みです。
私は、ホメオパシーを学ぶほどに、今まで常識だと教えられてきたことに、それでいいのかという、疑問がわくようになってきました。
そして、ホメオパシー的な世界観に親しむことで、物の見方がより柔軟に、より自由になってきているような気がしています。