「首や脇の下がいつも黒ずんでいる気がして、洗ってもきれいに落ちない…」それは、もしかすると黒色表皮腫かもしれません。黒色表皮腫は肥満や糖尿病だけが原因ではなく、5つの主要ながんに関連している可能性もあるそうです。これまで見られなかった異常が皮膚に見つかった場合、すぐに医師の診断を受けることがベストです。
 
まずは、黒色表皮腫がどんな病気か見てみましょう。黒色表皮腫は、一見すると皮膚の表面の汚れに見えますが、乾燥した状態だとまるで綿毛のように見えます。あたかも、体をきれいに洗っていないような感じです。首の後ろ、首の下側、脇の下、肘の曲がり部分、鼠径部など皮膚のしわがある箇所によく発生します。肥満体質の方や、2型糖尿病、高インスリン血症、多嚢胞性卵巣症候群などの患者に発生しやすいと言われています。
 
とある病院の胃腸科の医師が、回診をしていました。すると、ある病室の患者に付き添っていた、30代くらいの家族が、首の後方が黒くなっているのに気づきました。そこで、一通り問診を行い、ここ一月ほどずっと胃の調子が悪かったことが判明しました。ずっと病人に付き添っていたせいで、食事が不規則になったからだと、その人は思っていたそうです。その医師は胃がんを疑って、即座に胃カメラの検査を受けるように手配しました。首の後ろの黒ずみは、色素の沈着で肥満の人にはよく見られる症状ですが、胃カメラの検査の結果、やはりがんが見つかりました。黒色表皮腫は、近年その罹患数は増えてきているそうです。そして、場合によってはがんと関連するケースもみられます。特に胃がん、大腸がん、肝臓がん、卵巣がん、子宮内膜がんなどの腹部のがんは黒色表皮腫と関連している可能性があり、そのうち胃がんが6割を占めることもあるそうです。
 
なぜがんと黒色表皮腫には関連性があるのでしょうか?主な理由は、がんに罹患した後、がんが全身の代謝に影響を及ぼし、一部の色素が沈着しやすくなることです。がんは、ケラチノサイトやメラノサイトの増殖を刺激するだけの成長因子を分泌します。そして、消化管のがんだけでなく、乳がんもそれを引き起こす可能性があることが症例報告によってわかってきています。結局のところ、がんの兆候は非常に奇妙であり、症状そのものに加えて、全身に影響を与える可能性もあるそうです。
 
黒色表皮腫は、がんの進行と再発の追跡指標として用いることができます。がんが悪化すると、黒色表皮腫も悪化するのがよくみられます。逆に、治療によってがんが改善すると、黒色表皮腫も改善する可能性があります。
 
このようなケースは、体に異常が出た場合、軽視してはいけないことを私たちに警告してくれますが、もちろん黒色表皮腫についてパニックになる必要はありません。肥満が原因の場合は、食生活を見直し、脂肪や糖分、カロリーを減らし、適切な運動習慣を身につけることで、薬を使わなくても病変は徐々に薄くなって消えていくでしょう。

カロリーの高い食事や運動不足は多くの人に共通する問題なので、今はまだ血糖値や血圧、血中脂肪が正常範囲内であっても、将来的に範囲を越えたり、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)になると、リスクは一般の人よりも高くなってきます。 首の後ろの黒い汚れがなかなか消えないときは、医療機関を受診して原因を突き止めたうえで、適切な薬を処方してもらうことをおすすめします。 
(早安健康より)