おばあちゃんが言った。
「おじいちゃんをよろしく」
「うん」と答えた。
安心させてあげたかったから。
おばあちゃんが居なくなった家で、
毎日泣いていた、おじいちゃん。
私が明るく振る舞ってみても、
美味しいご飯を作ってみても、
おじいちゃんは、泣いていた。
おじいちゃんは、周りに居る人に、酷い言葉を言うようになった。
みんな離れていった。
「お前も家に帰れ」
本心じゃないと分かっていた。
わかっていたのに…
わたしも限界だった。
家を出る時に、おじいちゃんが言った。
「本当に帰るんか?」
「少し家に帰って、また帰ってくるね」
そう言うと、おじいちゃんは悲しそうに
「そうか…」
と答えた。
重い扉をゆっくり閉めた。
音を立てないように…
それでも、重たく冷たい音が響いた。
ガチャン。
おばあちゃん。
ごめんね。
おじいちゃん。
ごめんね。