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Brother Sun, Sister Moon

駄小説のたまり場。

セミ・ノンフィクションの子供達。

彼女は今日も来ている。
最近、特に現れる頻度が高い。以前は多くても週に一度ほどだったのだが、4月に入ってからは二日おきにはワタシの部屋にやってくるようになった。

なぜだろう、そう思ってはいたのだが、あまり深くは気にしていなかった。ワタシ自身、彼女にこうして会えるのはそれなりに嬉しいことではあるし、きっと彼女も同じなのだろう。



今日も彼女はワタシの部屋のソファに座り、ひとりテレビを観ている。

彼女はテレビが大好きだ。
彼女がこの世から消えたときにはあり得ない番組が、今あるから楽しい、という。


ただひとつ困ったことがある。


亡霊である彼女には、テレビのリモコンが操作できないのだ。
だから、チャンネルを変えたいと思ったとき、ワタシを呼ぶ。

「ねぇ。チャンネル変えて」いつもの呼び声。
「やれやれ」その都度ワタシは仕事の手を休め、彼女のためにリモコンを手に取るのだ。


「ごめんね」すこしすまなそうに彼女は謝る。
仕方ないさ、そう言いつつワタシは彼女が希望する局へとチャンネルを変え、再び仕事に戻る。



正直、迷惑に感じるときもある。
仕事の〆切に追われているときなどは、結構きつい。

「あのさぁ、言いにくいんだけど・・・」ワタシが言いかけると彼女は、「うん。わかった。ごめんね」こちらの考えを見透かして言った。

「すまない。手が放せないときもあるからさ」
「うん」と言うと彼女はすこしだけ寂しそうに微笑んだ。

その笑顔を見ながら、ワタシは自己嫌悪する。
『チャンネルくらい変えてやってもいいだろう?』自分の声が脳裏に響く。



「ごめんね」

おいおい、そんなに謝るなよ。切なくなってくる。

「アナタに会うと、少しだけ我が儘言いたくなるの」

そうだな。その位の我が儘は聞いてあげるべきだ。

以前恋人同士だったころのワタシは、彼女に対して我が儘し放題だった。彼女だってワタシに我が儘を言いたいときがあっただろうが、いつも笑ってワタシの意見や希望を優先してくれていた。



「ひどい彼氏だったよな」ワタシは言う。
「そんなことないよ。充分楽しかったもの」小首を傾げて笑う彼女。
「もっと一緒にいたかったけどね」ぽつりと言ったあと、また寂しそうに笑った。


「うん」だけどそれはもう叶わない。こんな形でなければ。



「なあ」ワタシは彼女に言う。
「もっと、我が儘言っていいんだぞ」


すると彼女は、
「今のままで十分。それに私が勝手にアナタにつきまとってるんだし」
「そしてそれが私の最大のワガママ」



涙がこぼれそうになるのを抑えながら、ワタシは答える。

「いつでも来いよ」
「うん」そう言って小首を傾げた亡霊は、笑顔を残して消えていった。


ワタシはまたリモコンを手に取る。
彼女が観ていたテレビを消す為に。