インフルエンザの
予防接種の季節になった。
私はとりあえず注射が嫌いなので
断固として拒否を続けている。
自分で決められる大人っていいなと思う。
学生だった頃は、
もちろんそんな選択肢もなく、
毎年、秋も深まったこの時期になると
2回の接種を強制的に受けさせられていた。
あれは小学校だったのか中学校だったのか。
ハッキリと思い出せないけど
頭の中に浮かぶ校舎の風景と
制服姿の友達がいたことを考えると、
多分、中学校の頃の出来事なのかも知れない。
その日は市から派遣された2名のお医者さんが、
午後の保健室で、
制服姿で列を作る中学生を相手に
次々と注射を打っていた。
注射の好きな生徒、はあまりいない。
問診票をもって、保健室へ向かうと
注射を打たれた生徒が次々と出てくる。
そこで、男の子たちが聞く。
「痛かった?」
すると、腕にコットンを押しつけながら
出てきた生徒たち数名が口をそろえて
「左の人、まじでいてぇ」
と言った。
そんなことを聞いては
何が何でも左の先生にだけは、打たれたくない。
先ほどの男の子達の
アドバイスを聞いた生徒は、誰ひとり
左の先生の前には並ばなかった。
一体何が起こったのか分からずに
焦った先生達が
「こっちにも並びなさい!」
と必死に注意するも
「まじ痛い」と分かっている先生の前になんて
誰も並ばない。
結局その先生も不機嫌になって怒りだし
「私は必要ないようだ」
と帰ってしまった。
怒りっぽいから、やっぱり注射も手荒だったんじゃ、
などと子供心に思った。
あの先生はその後、
どこかで予防接種を担当する時は
丁寧にやるようになったんだろうか。
残された先生は
残りの生徒達を一人で全部担当したのだから
それなりに大変だったんだろうと思う。
私も残された先生に打ってもらったけど、
やっぱり注射は痛かった。
帰ってしまった先生に打たれていたら
もっと痛かったのか。
それとも、
「左の先生まじいてー」と言った男の子が
ただ大げさだっただけで
本当の所、右も左も変わらなかったのか。
本当の所はどうだったんだろうと
毎年この時期がやって来ると、ふと考える。