シリーズものです。初めての方はこちらからどうぞ~。 

ヒマワリ気がつけば頭に腫瘍があったシリーズ ヒマワリ



ぬらりひょんは、2回目も失敗した。

針を刺した所に、幅3センチくらいのテープが貼られる。

左手、二つ目のテープ。


もはやここまで来ると、逆に失敗してくれて嬉しかった。

散々手こずったあとに「これでよし」とか言われても怖い。


この辺りになると、

さすがにゴールドピアスの先生も見るに見かねたという感じで、

3回目にぬらりひょんが針を刺すことはなかった。


左手に貼られた2か所のテープが、妙に突っ張っている気がして、

左手を少し上にあげて、一体自分の手がどうなっているのかを見たくなった。

すると、私の頭の上に立っていたぬらりひょんが


「痛くしちゃってすみません・・・」


と申し訳なさそうに謝ってきた。


い、いいよ。

ものすごい痛かったけど、もう過ぎたことだからいいよ。

まあ3回目トライしようとしてたら、さすがにケリ入れたかもしれないけどね。


と思ったけど、全部を口にする余裕はまだなかった。

右手にはまた針が刺されている最中で痛かったし、さっきの動揺が残っていた。

気持ちはそんなにすぐ、回復しない。


「大丈夫です、何が貼られてるのか見たかっただけです」


といった。

実際、受けた苦痛をぬらりひょんに見せつけるために

左手を見たかったわけじゃない。

少し上げた左手の中指を、ぬらりひょんに向かって立てていたわけでもない。


本当に、大きな何かが貼られているらしい自分の左手が

どうなっているのかを見たかっただけだった。


でも考えてみれば、このタイミングで左手を見たのは、

なんだかあてつけがましく見えたかもしれないし、

少し可愛そうだったのかも知れない。

ごめんね、ぬらりひょん。



右手に針を刺そうとしていたゴールドピアスの先生も、

針を刺してから動かしている時間が長くて、

若干手こずっているように見えたけど、そのうち上手く行ったみたいだった。


私は血管が細いというよりは、肉で覆われすぎているのか、

採血の時は、上手く血管が見つからずに失敗してしまう人も多い。


何度も腕を叩かれたり、

腕にまくゴムをもう一度きつく縛り直されたり、

いつもみんなが血管探しに苦労しているのを見てきたので、

何となく失敗されることに慣れてしまっている気がする。


「針が刺される叫び


という恐怖と戦うことに必死で

失敗してしまう人に腹が立つということもない。


むしろ、肉に覆われすぎていてすみません、という感じで

申し訳ない気持ちにさえなる。


でも今回は事情が違う。

頭を切る手術だし、麻酔が効かないとシャレにならない。

一体これはどうしたものかとドキドキしたけど、

ゴールドピアスの先生が頼もしく


「よし。」


と言ったのを聞いて、やっと安心することが出来た。


長かった・・・長かったよ・・・ねえ、ぬらりひょん?

そう思ったけど、言いませんでしたよもちろん。大人ですから?(笑)


一度刺して血管に入れられた針は、数日間そのままだった。

血管に差し込んだ部分からチューブのようなものが出ていて

点滴が必要な時は、そのチューブの先にだけ、何かを取り付けたりする。

針そのものは、毎回抜いたり刺したりされることはない。


そして点滴をしない時は、こんな風にガーゼとネットを使って、

いい感じにしまわれている。



チューブに血が漏れてて、

ややグロいのでぼかしてみました。

みんなで食べるとおいしいね




でも数日後に分かったことは、

刺さっていたのは予想していた針ではなかった、ということ。

すごく細くて白いチューブのようなもので、

看護師さんが抜くと、ニュルと2cmほど血管の中から出てきた。


実際の所、私はてっきり針が入っていると思い込んでいたので、

夜に寝る時は、ものすごい慎重だった。


例えばのこと。

寝相が悪くて、ウーンとかいいながら

自分で自分の右手の上に乗ってしまったりしたら?


もしかして血管の中の針が皮膚を突き破って

外に出てきちゃうのかも知れない。


しかも、運悪くその針が自分のお腹に刺さっちゃうかもしれない。

これを串刺しと言わずなんと言おう、そんな恐怖がずっとあった。


恐怖に怯えながら、

手術の傷と同じくらい、手にも気を遣って寝ていたんだけど

まあこのシリコンぽいものなら大丈夫だったんだなぁ、と後から知った。


話を手術室に戻そう。


やっと点滴のための針がちゃんと入った後は

ぬらりひょんが酸素マスクのようなものを当ててきた。

今度は失敗しない。


「だんだん眠くなります」


と言われた通り、あっという間にぼぉっとしてきた。

自分は台に寝ているんだ、という感覚が消えて、

フワフワとどこかに漂っているみたいで気持ちが良かった。


こたつでうたた寝をして、落ちていくときみたいな心地の良さだった。

いや、それの何倍も強烈な落ち方で、

自分の体が、そのまま今いる空間に溶けていきそうだった。


iPhone でメールをゴミ箱に入れる時、

ゴミ箱マークをタッチすると、スーッとメールが吸い込まれていく、

あの画像をご存知の方なら、イメージがしやすいと思う。

あんな感じで自分の意識と体がどこかに吸い込まれていくようだった。


あ、体がフワフワしてきた、これが麻酔?これが麻酔なの?

そう誰かに聞きたいと思った次の瞬間、

私の意識は完全になくなっていた。








ブログランキング・にほんブログ村へ  



ブログランキング・にほんブログ村へ