シリーズものです。初めての方はこちらからどうぞ~。 

ヒマワリ気がつけば頭に腫瘍があったシリーズ ヒマワリ



手術室に到着すると、

手術台があってその横に低いベッドがあった。

よく病院の診察室とかで見る、

先生の診察机と反対側においてある、少し低くて堅そうなベッド。

どちらかと言うと台。


そこに寝て下さいと言われて横になると

看護師さん達5,6人がぐるりと私の周りを取り囲み

両手を出せと言われる。


点滴の用意をしたり、血圧を測ったり

急にまな板の上のコイ度がアップした感じだった。


みんな、無言で作業が進められるので、

何事においてもまず全体像が見えてないと気になる私は、更に緊張してきた。

なに?次は何が行われるの?とドキドキした。


そして、私は見てはいけないものを見てしまう。



ぬらりひょんだった。

ぬらりひょんが、手にを持っている。



ぬらりひょんに、針ー!




危険度感知センサー、緊急作動!


危険度感知センサー、緊急作動!



赤ランプ点灯、針が一気に振り切れました。

し・か・も。

ぬらりひょんの顔、明らかに強張っている。

この人、注射とか、絶対に慣れてないっぽいー!!

あたしも緊張してたけど、間違いなくぬらりひょんも緊張していた。


と、ぬらりひょんが言う。



「これから点滴をしますね」


や、やっぱし…
分かってはいたけど、怖い。

私の中の危険度感知センサーはまだフルで稼働中だった。

血圧も急上昇した。


私に出来る方法は一つ。

心を無にして耐える。これしかない。

そう思って、ぎゅっと目をつぶって待った。


祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり ブツブツ ブツブツ

無の心 無の心





ぬらりひょん 「ちょっとチクっとします」



全然ちょっとじゃないし。涙



左手の手の甲。薬指の3cm下くらい。

採血の時よりも、ずっと痛い。

痛いけど、刺さってしまえばあとは痛くないハズ、

と思いきや、痛みがずっと続く。


ぬらりひょんは上手く血管が探せなかったらしく

詳細は良く分からないけど、明らかに手こずっている。



い、痛いんですけどーーー!(悲鳴)



って言おうと思ったら別の声が聞こえた。


「それじゃダメでしょ」


ゴールドピアスの先生の声だった。



ダメって何がぁぁ-!涙



小さい声で言っても聞こえてるし!

結局失敗に終わり、やり直し。

この辺りで私の精神は相当に乱れ始めていた。


「どうもすみません・・・」とぬらりひょんが謝った。

い、いいよ・・・仕方がないよ・・・研修医だもんね・・・


今度は同じ左手の別の場所。

親指をずーっと下に行き、手首から更に12,3cm下に行った辺り。

そこに2回目が刺された。

これも痛い。でも耐えるしかない。


が、気配でどうも今回も上手く行ってない感じが伝わってくる。

ぬらりひょんの緊張が、ものすごく伝わってくる。

更にはゴールドピアスの先生の溜息まで聞こえた。


「手術室」

「やたら緊張している新米の医者」

「ベテラン医師の溜息」


絶対にあってはならない 組 み 合 わ せ。


もう、この辺りで私も限界だった。

普通よりも太い針で刺されて、本当に痛かった。


ぬらりひょんは明らかに下手だ。

このままゴールドピアスの先生がOKを出したとしても

もしもちゃんと血管に入ってなかったら?

ちゃんと入ってなかったら麻酔、効かないかも知れないの?


麻酔、効かなかったら、頭切られた時どうなるの?


もう、別の先生にやってほしい・・・


誰か、助けて。涙


本気で泣きそうだった。

緊張と、痛みと、心細さで泣き出す寸前だった。


ぬらりひょんが、私の腕に針を刺して

その針をぐりぐりと動かしている時間が、ものすごく長く感じた。

少しでも気持ちを落ち着けようとして、何度も何度も深呼吸をした。



でも、どうしようもない気持ちでいる私には、一つだけ心の支えがあった。

手術前の私の気持ちに寄り添ってくれた、あの看護師さん。


彼女は私が針を刺されて痛い思いをしている間、

ずっと私の足元に立って、足をさすってくれていた。

そうやって、なんとか私のつらい気持ちをほぐそうとしてくれていた。


恐怖と痛みの中で、彼女の手のぬくもりだけが、私の心の支えだった。

言葉なんか無くたって、優しい気持ちで触れてくれるだけで

人の気持ちは十分に伝わる。


それを心から知った瞬間だった。







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