いつもお世話になっている人達がいる。
朝、会社に行くときに毎日渋谷の駅からバスに乗る。
多分、バスに乗って通い始めてから1年近くはたったある朝のことだったと思う。
私はいつも、Aという行先のバスに乗る。
ある時、となりのS駅行のバスに乗ってもAには行けることに気がついた。
それ以降、S駅行きとA行のバス両方を利用して、早く来た方のバスに乗るようになった。
そのバス乗り場には、おじさん達がいて
次から次に来る人を途中で区切ってバスを発車させたり、
このバスに乗ればどこどこに行けますか?という質問に答えたり
ある場所に行くにはどちらのバスに乗った方がいいのか、などの質問に答えている。
その朝、私はA行ではなくS駅行のバスを待つ人の列に並んだ。
すると、いつも見かけるおじさんが私に向かって「A行じゃないよ~!」と言った。
私は最初、何故このおじさんが私にそんなこと言うのかが理解できず
きょとんとしたまま、無言になってしまった。
で、少し考えてから「あ、いつものA行のバスではなくて、S駅行のバスに乗ってるから
あのおじさんは「A行じゃないよ、S駅行だよ」と私に言ったのか!と気がついた。
おじさんには毎朝会うから、私がA行に乗ると知ってたんだ。
それでおじさんに「Aに行くにはこっちでもいいって気がついたんです!」と説明した。
それから、毎朝おじさんに会うと「おはようございます」と挨拶するようになった。
おじさん達は全部で5人いる。
一人は挨拶をしても無反応な人だけど、
そのうちに残りの4人のおじさん達と顔見知りになった。
このバス乗り場はとにかく毎朝すごい人で、走って駆け込もうとする人が多数いる。
出発時間になると、おじさんがチェーンで人が入れないようにして
強制的にバスを出発させてしまう。
それで目の前のバスを逃したことが何回かあった。
また、とにかく人がどんどん乗り込むので、半分ぐらい人が乗り込んだ時点で
後ろのドアも空いて、前からだけでなく後ろからも人が乗れるようにしたりする。
おじさんと知り合いになってから、
おじさん達はちょっと早いタイミングでも後ろのドアを開けてくれたり、
あと2分待てばあっちにA行の直通バスが出るよ!
教えてくれたりするようになった。
最近では、一番最初にそっちはA行じゃなくてS駅行だよと教えてくれたA藤さんは
私がバス乗り場に向かうのが見えると、子供と遊ぶかのように看板の裏側に隠れたりする。
あちこちに隠れて、私が「見えてるよ~!」と突っ込む。
そのあと「いってきます!」と挨拶して、A藤さんに「いってらっしゃい」と見送られる、
というパターンまで出来上がってきた。
一度、完璧に隠れたA藤さんに全く気がつかずにバスに乗り込んだことがあった。
A藤さんは出てくるタイミングを失い、悲しい思いをさせてしまった。
次の日の朝「昨日は隠れてたんだよ・・・」と悲しそうに打ち明けられた。
A藤さんごめんね。。。
その後、A藤さんは大体すぐに見つけられる場所に半身隠すようになった。
私もなるべくA藤さんには悲しい思いをさせないよう、
目を皿のようにしてチェックをしている。
12月は10日くらいの休みをもらって旅行に出ていた。
戻ってきて久しぶりに出勤するという朝、
おじさんが「海外旅行?心配したんだよー!」と声をかけてくれた。
こんな独り者を心配してくれる人がいるなんて、本当にありがたい。涙
会社に来ると、一日二回、絶対にお世話になる人がいる。
それはメールルームのお兄さん、N山さん。
毎日決まった時間に来て、IN&OUTの社内便なんかをチェックしてくれる。
25日には給与明細を持って来てくれるのもN山さんだ。
N山さんは、とても若い。多分やっと20代後半にさしかかった感じ。
とても童顔で小柄なので、弟みたいな雰囲気がある。
フットワークが軽くて、問い合わせなんかをしても、即座に対応してくれるし
メールルームに出しに行かなければならない大きな荷物なんかがあるときも
運ぶのが大変だと思ってお願いすると、
あっという間に飛んできて代わりに運んでくれる。
いつも「全然大丈夫ですよ~」というひょうひょうとした感じで
仕事を前向きに引き受けてくれるので、本当に助けられている。
一緒に仕事をしてとても気持ちのいい人、
というのはN山さんのような人のことをいうんだろう。
見習いたいなぁ、といつも思う。
それから、いつも仕事の定時時刻をちょっと過ぎたころにやってくる男性、Nさん。
Nさんはいくつくらいだろう、多分60前後なんだと思う。
Nさんはいつも私のデスクに設置してあるゴミ箱のビニールを交換してくれる。
まだ私が残って仕事をしているとき、Nさんは私に丁寧にいう。「失礼します」
そして交換が終わると「失礼しました」。
両手をきちんと伸ばして、腿の辺りに当てながら、お辞儀をする。
私なんかの、絵に描いたようなペーペー社員に、そういいながら頭を下げる。
絶対に、絶対に必ずそうやって2回、頭を下げる。
偉い人達だけにやるのではない。
ビニールを交換する相手、それがどんなに平社員だろうと、態度は変わらない。
帰りに廊下で会う時があると、コートを着て鞄を持っている私に
「お疲れ様でした」とやっぱり頭を下げてお辞儀をする。
私はいつも、Nさんがそうやって頭を下げて仕事をする姿を見るたびに
すごい人だなぁ、本当にプロフェッショナルなんだなぁと思う。
表面だけ礼儀正しくしたり、一部の人に礼儀正しい態度を取ったりしても
誰も見ていないんだから、分からない。
でも、Nさんは誰が見ていなくても徹底して礼儀正しい。
毎日きれいなゴミ箱を使えるだけでなく、
絶対に揺らがない、社会人としての礼儀を教えてくれるNさんが
私のエリアの担当で本当にラッキーだなぁと思う。
本で読むよりも、人から聞くよりも、毎日Nさんが態度で示してくれるからこそ
常に礼儀正しくあることの大切さを、私は体験して学ぶことが出来ているのだから。
バス乗り場のおじさん達。メールルームのN山さん。クリーニング担当のNさん。
朝から夜まで、いろんな人達に支えられて仕事をしている。
毎朝、おじさん達に気持ちのいい挨拶をしてもらって、明るい気分で一日が始まり、
どんな時もポジティブで、仕事に前向きな姿勢をN山さんに習い、
Nさんには徹底した礼儀を毎日教わっている。
こうして考えると、本当に恵まれているんだなぁと思う。