とりあえず、よくしゃべる運転手さんだった。

姉家族の家に行くために外出をした。
最寄の駅で電車を降りて、下のロータリーまで行く。

その数分を歩くだけで、あっという間に汗をかく。
ここでバスを待っていては明らかにそのうち倒れる、

と思って急いでタクシーに乗り、行き先を告げる。


ああタクシーのこの涼しさが嬉しい・・・と思っていると運転手さんが言った。
「いやー、ちょっとありえない暑さですね」私も返事をした。
「本当ですね、もう真夏の到来ですね」運転手さんは続ける。
「私なんてね、何しろこの頭でしょ。

直射日光がモロに当たっちゃいますからね。死活問題ですよ」


そんなことありませんよ~と言おうとして、後ろから頭を確認したら
明らかにそんなことある頭だった。なので
「きゃっははははh ほんとですね、それは大変ですね」

すると運転手さんも
「あはっはははははは、ほんとですよ。照り返しも半端じゃありませんからね。
周りにも迷惑になっちゃいますからね。

ですから帽子は絶対ですよ。


それにしてもこの暑さでしょ。全然人が歩いてないんですよね。
同僚なんて朝の6時から今日のシフトが始まったってのに
9時になってやっと最初のお客さんを乗せたんですよ。
いやんなっちゃいますよね。

さっきの駅前でね、昨日お祭りがあったんで、

今日の午前中はやぐらを片付けてたんですよ。
その時の温度、コンクリートがあったまっちゃっててね。

42度だったみたいですよ。42度!
何もしなくても汗が出てくるわけですよ。


そういえば言い忘れましたがお客さんね、

帽子は中でも麦藁帽子がお勧めですね。
麦藁帽子は何しろ通気性がいいですからね。

残った髪にも優しいんです。


ですからお客さんね、買うなら絶対麦藁帽子ですよ。
お客さん、麦藁帽子きっと似合いますよ。
歩いてらっしゃるのを見てすぐにそう思いましたよ。

今日みたいなお召物にもきっと合いますよ。
(白い薄手のワンピースに、赤い半袖のカーディガンだった)
最近はあんなタイプの麦わらも出てますよね。
(前方に歩いている女性を指差す)

あー、でもやっぱりお客さんはね、

少しつばの広いものの方が合うかもしれませんね。
チェックのリボンかなんか合わせるときっといいですよ。」

そこで私はきいてみた。
「どこに行ったらいい麦わら帽子、売ってますかねぇ?」

運転手さんは
「あれですね、新宿のルミネだったら

結構いいものがあるのはこの間見ましたよ。
今日もね、さっき新宿までお客さんを乗せたんですよ。
その帰りにこちらに戻ってくる時にね、全然歩いてる人がいなかったのに、
偶然手を上げるお客さんがいてね。

いやー、本当は乗せちゃいけないんですよ、

この市内でしかお客さんをひろっちゃいけないんです。
でも乗せちゃおうかなーなんてね。

あはっははははははっはははっは


え?見つかっちゃったら?

あー見つかっちゃったらそうですね、それは結構まずいですね。
だからやるなら見つからないようにやらないとね。


それにしてもこの暑さでしょ。
この機械も直射日光を浴びてね、温度が高いせいか調子悪いんです。
(空車・迎車・支払中、などの表示を出す、左前にある小さな機械を指差す)


でもね、何故か支払中だけはきっちり動くんですよ。
あははっはははっははは、こいつもなかなかやるでしょ。


あ、ハイ、じゃあこちらでとめさせて頂きますね。
710円になります、

1010円からお預かりなので300円のお返しですね。
レシートいります?あ、そうですか?すみませんね。
お忘れ物なさいませんようご確認下さい。

麦藁帽子ね、是非買ってくださいね。
どうもありがとうございました。」

それにしても本当に、ほんとーーーによくしゃべる運転手さんだった。
でも、明るくていい人だったな。死活問題までシェアしてくれて(笑)
今度、麦藁帽子、探してみます。