おっといけない、気づいてみれば既に弥生。

 

 前回の更新から大分ご無沙汰となってしまったが、ネット上のものが生活の一部どころか生活を支配するものであってはならないという信念があるので、ブログやソーシャルメディアのために何かをするという気も起こらず、単に他に優先すべきことがあり、意図的に放置していたわけなので悪しからず。

 

 何を隠そう、年が明けてからイベントらしいイベントも特になく、やや多忙ながらもごく平凡な日々を送っていただけなのである。

 

 「やや多忙」というのは、新年度が4月に始まる日本とは異なりこちらの会計年度は暦年通り(*)なので「新年=新年度」であり、年度が替われば組織も変わるわけであり、本業は専門職でありながら管理職の使い走りを掛け持ちでやっている自身もその対応に追われていただけのこと。


 当然ながら、連日早朝から深夜までパソコンの画面とにらめっこというわけではなく、夕食には食べたいものを自炊し、誰かや何かに夜更かしすることを強いられずに毎日ぐっすりと眠ることができているわけなので、文句は言うまい。

 

 春分の日を3週間後に控えた今ではこちらの日照時間も大分伸び、自宅の窓際の一等席を占有するレモンの木は、近所の公園に植えられている梅や待雪草などよりも先に白い蕾を付け始めたほど。

 

 

 まだ寒さが残っているとはいえ、運よく15・6時頃に仕事を切り上げられた日などには、日没まで買い物がてら逍遥することさえできているので、重たいカメラバッグを背負って漫歩きする機会も増えてくるはず。

 (*) CIA のリストによれば、会計年度が暦年通りである国が圧倒的多数であるものの、日本のように4月始まりの国も少なくはなく、厳密には4月6日始まりであるものの英国もその一つであり、ニュージーランドやカナダ、カリブ海諸国のように英連邦王国を構成する国家やシンガポールやインドのような旧英国領の多くは、(旧)宗主国のシステムに倣って4月始まりの会計年度を採用している国が多い。

 クリスマスといえば、こちらでも身内同士でプレゼントを贈り合う習慣がある。

 

 幸いにも自身のパートナーの家族はポーランドにありがちな大所帯とは程遠いものなので、店や配達の混雑などを気にせず済む10‐11月に各々の好みや趣味に合ったものを購入し、クリスマスまで戸棚にしまい込んでおけば良いのでまだ楽であるが、同僚や友人の中には「甥っ子姪っ子を含めてウン十人分のプレゼントを購入せねばならぬので12月はジリ貧生活」という人も少なくはないので、必ずしも皆が幸せになる習慣であるというわけではないようである。

 

 自身も「欲しい物は良く吟味して買い、必要ない物は絶対に買わない」という、格好良く言えば「堅実」な、茶化して言えば「どケチ」な生活を心掛けているので、小さな物であっても予期せぬ贈り物を貰うことがあまり好きではない。

 

 とはいえ、「お返しは一切お断り」では相手が気を悪くすることは分かっているので、欲しい物と不要な物(受け取りたくないもの)を列挙して周知することで、「せっかく貰ったものなのだから」と喜んだふりをして、一度か二度使ってみた後に屑籠行きとなるものを受け取ることだけは避けている。

 

 今年貰ったもので本当に嬉しかったのは、藤次郎のうろこ引き(ウロコ取り器)。

 

 

 今まで使っていた真鍮製のものの木製の取っ手がダメになってしまったので、何か良いものはないものかと調べていた所、取っ手も含めて全てステンレス製というものに遭遇。

 

 ほぼ毎日握る包丁が藤次郎のもので、信頼性の高い製品を作るメーカーであることを知っていたので、よそ見をすることもなく「これクリスマス用でお願い」と、取り扱いのあるオンラインショップのリンクをパートナーに送ったのが11月初旬のこと。

 

 最寄りの市場でお節用の丸魚の購入を考えているので、出番はもうすぐである。

 クリスマス休暇を挟んで一週間ぶりの更新になってしまったが、ブログやソーシャルメディアに費やしている時間などない程生活が充実しているわけであるから、何も悲しむことはない。

 

 ところで、日本の多くの家庭が三が日をおせちとお雑煮だけで過ごす(ことを強要される)よう、こちらでもクリスマス料理から「解放」されるようになるには数日かかる。

 

 特に、今年は野菜のストック(出汁)からホワイトソースまで一から手作りしたシーフードグラタンを除けば特に変わり種もなく、自身が具材を包む皮になってしまったのかと思うほどピェロギ(pierogi - ポテト餃子)を三日三晩食べ続け、とどめとでも言わぬばかりに土産に持たされたビゴス (bigos) という胃に重たいシチューをようやく片付けたのが昨晩のこと。

 

(指紋が人それぞれ別の形をしているよう、ピェロギの形も包む人によって形態が異なるのが面白い)

 

 年に一度の「御馳走」の機会であるとはいえ、普段は粗食を心掛けている自身の胃には全く優しくないポーランドのクリスマス。

 

 疲れた胃腸と過活動気味となっている摂食中枢を健全な状態に戻すために、大みそかまではお節の支度をしながら和食を楽しむのがここ数年の慣例。


 

 今日の主菜は茄子の煮浸し。

 

 茄子の皮は剥かず、隠し包丁を入れるのみ。

 

 「揚げ出し」では胃に重たいので、少量の油を垂らしたフライパンで茄子を炒め、少し焼き目がついたら鰹出汁(かつお節)、日本酒、醤油、刻み生姜を投入して、汁がナスにしみるまで弱火で煮るのみ。

 

 自身が供するまで茄子は果物の一種だと信じていたパートナーも、今では喜んで箸を伸ばしてくれるから嬉しいものである(ナスの「果実」であるので、あながち間違いではない)。

 

 ブロッコリーは何の変哲もない、昼食用に茹でたものの残り。

 

 しっかりと塩茹でしたものなので、マヨネーズやドレッシングなどは一切不要。


 ちなみに、中央の納豆も自家製。

 

 大豆の水戻しと発酵後の熟成も含めると仕込みには丸三日かかるものの、一度作ってしまえばよく日持ちがするので、今では2週間おき程度で仕込みを行っている。

 

 一日中パソコンの画面とにらめっこをしている仕事をしているせいか、自身の脳ミソの違った部位を使うことのできる調理という行為を苦痛であるとは感じない。

 

 むしろ、自身が口にするものを自分で管理するという特権を享受できていることを有難く感じるほど。

 

 「井の中の蛙」ではいけないが、ここらでは一番美味しいものを食べている自信がある。

 クリスマスのために一時帰省をしている同僚が少なくないので、その埋め合わせをするために朝から晩までパソコンに向かう生活が続いている。

 

 今年も残すところあと10日なので当然と言えば当然であるが、仕事上では既に「年末モード」である。

 

 実際の所、皆が帰省し、家族や親類などで食卓を囲んで特別な料理を楽しむという点では、ポーランドのクリスマスは日本の正月によく似ている。

 

 「日本でも同じようにクリスマスを祝うの?」という質問に「日本のキリスト教徒の割合は人口の1%にも満たないから、クリスマスは休日でさえない」という回答をすると、異常者を見たかのように驚かれるのだが、「その代わりと言うわけではないが、正月に似たような形で新年を祝うのが日本の伝統」という話を続けると、大抵の人が「クリスマスを祝わない野蛮人」の付け札を取っ払ってくれるわけである。

 

 日本のお節と同様にポーランドのクリスマスで重要視されているのが、ウィギリア (Wigilia) と呼ばれる、クリスマスイブに行われる晩餐。

 

 ただ、「晩餐」と言えども、「好きなものを何でも豪勢」にというわけではなく、提供される料理自体は割と質素なものである。

 

 というのも、カトリックの教えではクリスマス前に節制(簡単に言えば「断食」なのであるが、完全に食を断つのではなく、質素な食事を摂ること)することを薦められているため、日本の「ケンタッキー・クリスマス」とは逆に、敬虔なカトリック教徒の家庭ではでなくても、「ポーランドの伝統」として、クリスマス前夜は、肉料理を一切食べないか、控える傾向にあるからである。

 

 献立は家庭によって異なるものの、「定番」とされているものをいくつか挙げると、

  • バルシチ (Barszcz)
    日本では「ボルシチ」で知られている、赤カブのスープ。ウシュカ (
    Uszka - ポーランド語で「小さな耳」の意味) と呼ばれる、イタリアのラヴィオリ (Ravioli) のような具材を包んだパスタを入れる家庭もあるようだが、自身は野菜がゴロゴロたっぷりと入ったものに、大匙ですくったシュメタナ (śmietana) と呼ばれるサワークリームをスープの中で少しずつ溶かしながら食べるのが好み。
     
  • サワトカ・ヤジノヴァ (Sałatka jarzynowa
    直訳すれば「野菜サラダ」という訳の分からない名前の付いた、卵ポテトサラダ。
    マヨネーズたっぷりなので「一匙二匙程度で結構」と考えていても、どういうわけか箸が進んでしまう、呪いのかかった料理。

     

  • 塩漬けか酢漬けのニシンや鱒 (ます)
    キリスト教世界では「魚は肉ではない」という解釈であり、同じカトリック国であるスペインのとある地域では、クリスマスに鰻を食べるのが伝統であるという話を現地で聞いた覚えがある。
     

  • ピェロギ (Pierogi)
    マッシュドポテトとトゥファログ(
    Twaróg) というコッテージチーズを混ぜた具材を入れたダンプリング(餃子)。
    これが謂わば「メイン」であるので、来客の数によっては数百・数千という、気の遠くなりそうな数のピェロギを一つ一つ手包みで作る家庭もある。自身も毎年そのお手伝いをするわけだが、他の人が包むと丸っこい可愛らしいものができるのに、自身が包むとどう頑張っても角がピンと立った餃子にしか見えないものにしかならないので困ってしまう。

     
  • マコヴィエツ (Makowiec)
    ケシの実 (mak) が入った焼き菓子。好き嫌いが分かれれるが、自身の大好物。

 などがある。

 上記の料理に加えて鯉(コイ)を食べる家庭も多いようで、スーパーや市場などで生け簀に入れられて売られているものを家に持ち帰り、風呂場(浴槽)で生かしておいたものをクリスマスに〆て揚げたりオーブンで焼いたりするそうだが、元妻の家庭も今のパートナーの家庭も鯉を出さないため、自身は移住前も含めてポーランドのクリスマスを10回以上経験しているのにも関わらず、クリスマスに鯉を食べたことが未だにないわけである。

 ただ、多くの家庭が「ポーランドの伝統」として食べているこの鯉料理、実は「育てやすいから」という理由で社会主義時代に人民政府 (PRL) が消費を奨励したものだそうなので、お目にかかることが出来なくても残念であるとは思わない。

 

 ポーランドでは2018年3月より「日曜営業制限法」なるものが布かれており、基本的にスーパーやコンビニも含めた小売店は、日曜に営業を行うことを法律で禁止されている。

 

 その理由としては「日曜は礼拝と家族のためにあるもの」であるそうだが、一般市民にとっては非常に不便である上に、平日にアルバイトなどができない学生にとっては貴重な勤労の機会が減るわけであるから、この法律は兎に角不評なわけである。

 

 誰がそんな中世ヨーロッパのような時代違いな考えに賛成しているのかといえば、国会の過半数を占める、宗教狂いの似非保守の政治家たち。

 

 「日曜の商業行為を制限してしまえば国民が教会に戻ってくるに違いない」とでも考えたのであろうが、人権、世情を無視した教義を押し付ける姿勢や、聖職者による児童の性的虐待問題などもあって、現実は彼らの思惑通りには動いてはいないようだ。

 

 2021年に Centrum Badania Opinii Społecznej (CBOS) という機関が発表した世論調査結果によると、最低でも週一回、何らかの形で宗教的儀式に参加する人の割合は、1992年3月に69.5%であったものが、2021年8月42.9%まで下落。国民の4人に一人(24.1%) は宗教的儀式に参加することが一切なく、都市部においてはその割合が40.7%まで上る。

 

 「ポーランド国民の9割がカソリック教徒である」などと紹介する資料は、教会の名簿に名前がある人を全て勘定した数字を載せているだけであって、現実では国民の皆が礼拝などのために教会に足繁く通っているわけではない。

 

 自身の周囲に限って言えば、結婚式や葬式などで仕方なしに足を運ぶ場合を除けば、教会に足を踏み入れることなど皆無という人が殆どである。


 ところで、先に「基本的に禁止」と書いたが、当然ながら上記の法律には例外があり、例えばパン屋や花屋、駅や街中のキオスクなどはその対象外となっているため、多くのコンビニがパン屋を自称して日曜も営業を行っているし、面白い例としては、自宅から少し離れた所にある大規模スーパーマーケットが「読書クラブ」を自称していて、「店舗はそのクラブの付属でしかないわけだから、営業制限の対象にはならない」として日曜の営業を行っている例もある。


 社会主義時代には法の抜け穴を利用することが成功の秘訣の一つであったそうであるから、ポーランド国民はこうした馬鹿げた法律に「知恵で対抗」することに長けている。上記の「読書クラブ」のような例は数え切れないほどあり、とんち話を読んでいるいるようで面白い。

 

 また、公的に例外を認められている日曜がいくつかあり、それにはイースターやクリスマスといった宗教的祝日の直前の日曜などが含まれる。


 クリスマス一週間前の今日もその一つであったが、平日に段取り良く買い物を済ましてしまうことに慣れっことなってしまった今、クリスマスプレゼントの買い物などで混雑するショッピングモールなどに足を運ぶことなど考えさえしなかった。

 冬至と言えば、一年の内で一番昼が短く、一番夜が長い日。

 

 とりわけ、自身が根を下ろした Trójmiasto はポーランドのほぼ最北端に位置するため、冬場は極端に日が短くなる。

 

 南国のように考えられているイタリアやスペインでさえ北海道と同じような緯度にあるように、欧州全体が一般の人が考えているよりも高緯度にあるのだが、自身の住む地域は北緯54と55度の間。

 

 日本最北端の地である択捉島のカモイワッカ岬が北緯45度33分19秒にあり、それよりも10度近くも北にあると言えば、どれだけ高緯度に位置しているか理解していただけるだろうか。

 

 他にどのような国や地域が同緯度にあるのか気になったので Google Earth で東に向かって世界一周をしてみた所、以下の地域や国々が北緯54と55度の間にあることが分かった。

  • カリーニングラード(ロシアの飛び地)
  • カウナス、ヴィリニュス(リトアニア)
  • スモレンスク、ノヴォシビルスク、バイカル湖、カムチャッカ半島(ロシア)
  • アクタン島(アメリカ・アラスカ州)
  • プリンスルパート(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)、ハドソン湾南岸(カナダ・オンタリオ州)
  • 北アイルランド(ほぼ全域)
  • マン島(イギリス王室属領)
  • 湖水地方(イギリス)
  • キール、ロストック(ドイツ)
     

 (Craft MAP にて作成)

 

 天気予報によると、今年の冬至である12月22日の日の出は8時3分で、日の入りは3時21分。昼の長さは僅か7時間18分。

 

 自身の故郷である横浜の日の出が6時44分で、日の入りが4時31分とあるので、昼の長さが2時間半も短いことになる。

 

 通勤という行為をしなくなって随分久しくなるものの、数年前まで、一般的な勤務時間帯(8‐16時)に勤務をしていたのにも関わらず、この時期は、朝も晩も真っ暗な中、通勤、帰宅していたことを思い出す。

 

 泣きっ面に蜂ではないが、この時期は日が短い上、好天の日が少ないのだ。

 

 紫外線に弱く、元々モグラのような生活をしている自身には目に見えるような影響は無いとはいえ、南欧や中東から来ている同僚や友人達には相当堪えるようで、まるで白黒映画の中に入ったかのようなほぼモノクロな配色の街の風景同様に、生気のない顔をしている。

 昨日は柚子の話をしたので、今日もまた冬至を代表する食べ物、南瓜(かぼちゃ)の話。

 

 西洋南瓜の品種の一つに、打木赤皮甘栗南瓜(うつぎあかがわあまぐりかぼちゃ)と呼ばれるものがある。

 

 どちらかといえば小ぶりのものが多いのだが、「赤皮」という名前の通り全体があざやかな朱色をしていて、食卓にはよく映える。

 

 日本では「加賀野菜」として石川県を中心に栽培されているようであるが、こちらではどういうわけか 「北海道カボチャ」(Dynia Hokkaido) という名前で売られている。

 

 英語圏でも 'Red Kuri' や ’Uchiki Kuri' に加えて ’Hokkaido’ として呼ばれているようなので、ポーランド特有の呼び方というわけでもないようではあるものの、何故「北海道」という名前で呼ばれるようになったのか説明している資料には未だに出会えずにいる。

 

 

 

 

 皮が薄いのでよく洗ったものをそのままぶつ切りにし、圧力鍋でほんの数分調理するだけで、味付け次第では良く日持ちのする美味しい一品が簡単にできるので自身は重用しているのだが、こちらでは南瓜など、10月のハロウィンの時期を過ぎるとあまり見向きもされないようで、近所のスーパーでは kg 当たり2.99ズロチ (現在のレートでおよそ92.4円)という捨て値で売られていた。
 

 冬至の日には普段は大事に使っている削り節を奮発して、「おかか煮」にして楽しみたいと思う。

 

 柚子と言えば、一番日当たりの良い窓際で、植木鉢ながらも大事に育てている木がある。

 

 今年は小ぶりながらもしっかりとした実をいくつか付けてくれたので、それぞれが黄色く熟すのを待って、収穫を行った。

 ポーランドにおいて柚子という食材は、浸透していないどころか全くと言ってよいほど知られておらず、ワルシャワやクラクフなど、もう少し大きい都市であるとまた状況は違うのかもしれないが、こちらでは柚子風味のものなど、先日紹介した
「レモン味」として売られていた柚子風味のポッキー以外、目にしたことがない。
 

 食材として使用できるものとなると、柚子胡椒のチューブに入ったものか砂糖漬けされた皮が、ニッチなものを扱うネットショップで高い値を付けて売られている程度。当然ながら、生の果実など、専門の業者を通しでもしなければ手に入りやしない。

 

 しかしながら、自身はこちらに来てから、無いものは無理して買い求めるのでなく、無理のない範囲で自分で作り、それで満足することにしている。

 

 全ては工藤久代さんの、60年代後半から70年代半ばにかけて、夫の転勤に伴ってワルシャワで生活した経験を綴った『ワルシャワ貧乏物語』という本のお陰。

 

 夫はポーランド文学者で、ワルシャワ大学日本語学科で教鞭を取られていた故・工藤幸雄氏。

 

 日本のものどころかモノ自体が無かった時代、それも、大学から支給される現地水準の給料でやりくりしなければならなかった中、絶え間ない努力や積み重ねながら、言葉も通じない異国で日本食の「再現」や、現地食材の「開拓」などを行う様子が、「貧乏物語」という表題とは裏腹に、非常に優しい文調で書かれている。

 

 無いものは工夫して作るなど、もはや執念とも呼べる行動力と数々の逆境にもめげない姿勢にひどく感銘を受け、自身も見倣うことにしたのだ。

 

 今では1m程の高さにまで育った柚子の木も、そのうちの一つ。

 

 毎日欠かさず水やりを行い、鋭く大きなトゲに苦戦しながら手作業で受粉を行うなど、割と手間暇はかかったものの、そういった努力が今回、文字通り実を結んだわけである。


 

 収穫したものは、皮と実は別々に、それぞれ小分けにして冷凍庫で保管している。これからは使いたい時に使う分だけ解凍して使うことができるのだ。

 

 

 ところで、その副産物である種を湿らせたキッチンペーパーの上で保管していたものが、12月の一番日が短い時期であるのにもかかわらず、芽を出し始めた。

 

 

 「桃栗三年、柿八年、柚子の大馬鹿十八年」などと言うが、実際は4-5年で結実するようになるという。

 

 キミ・ライコネンではないが、どうなるか見てみようではないか。

 こちらで安易に入手できる日本の商品と言えば、キッコーマンの醤油(製造はオランダ)や、森永乳業が製造している常温保存が可能な豆腐(包装は違うものの、日本でも購入可能であるようだ)などに限られているのだが、時折、「何故こんなものがこんなところで」と首をかしげてしまう商品に出くわすことがある。

 

 その例の一つが、先日、近所の Lidl というスーパーで見かけてつい手に取ってしまった「柚子味」のポッキー。

 

 

 公式サイトでさえ紹介されていない商品なので「限定フレーバー」とあるのは嘘ではなさそうであるが、全国展開しているドイツ系のスーパーであるとはいえ、ポーランドの辺境の小さな店舗でさえ手に入ってしまうようであると、「限定」の有難味など全くない。
 

 ちなみに製造はタイで行われているようで、裏側は全てタイ語の表記がびっしりと。

 

 

 (Google 翻訳によると)「宮崎の産地直送の原料を使用。本格的な日本独自の味覚をお試しあれ」とは書いてあるものの、原材料一覧を見ても、乳化剤や香料の直前に柚子パウダー (Yuzu proszek) と表記されている程度なので、こちらで0.1%しかワサビを含まないものが堂々と WASABI として売られているように、原材料に占める柚子の割合は極々僅かなものであると安易に想像できる。

 

 実際に開封してみても柚子の「ゆ」の字も感じなかったのだが、口に放り込んでみると「なんとなく柚子っぽい」香りが口に広がるものだから面白い。

 

 どうしてこんなものが売られているのかと思って Lidl のホームページを覗いてみたところ、「『レモン味』のチョコレートスティック菓子」と紹介されており、絶句。


  

 

 これ以上深入りすることは精神衛生上宜しくなさそうだと悟り、そのままに。

 

 ポーランドハイイカゲンナクニナノデアル。ヨクオボエテオキタマヘ。

 

 ちなみに、4.99ズロチは今のレートでおよそ154円

 

 自身としてはこの一箱でもう結構であるが、物珍しさがあるので、プレゼント用等にもう数箱買っておくべきであろうか。

 「えっ、ポーランドで働いているの?トヨタ?スズキ?トーシバ?」


 これもまた、数百回くらい耳にした質問。

 「観光でないのであれば、仕事でポーランドという国に無理やり送り込まれたに違いない」という考えを持つ人が少なくはないようである。

 

 実際の所、ポーランドに滞在している人の多くが日本企業の駐在員やその家族や関係者であると聞くし、統計結果も、日本企業の多く集まる県 (Województwo) に邦人が集中していることを示している。

 

 (以下、数字や統計に興味の無い方は、思い切ってスクロールダウンして頂いて結構)

 

 2022年度の県別在留邦人数

 出典:migracje.gov.pl/ 
 Urząd do Spraw Cudzoziemców (「ポーランド政府外国人局」とでも訳すべきか)のデータを元にしたものとのこと。

 

 この統計によれば、2022現在、ポーランド国内には912人の邦人が登録されているとのこと

 

 外務省発表の海外在留邦人数調査統計結果 (2021年10月1日現在 2,012人) と大きな開きがあるのは、日本側の統計が3ヶ月月以上ポーランドに滞在する者を「長期滞在者」として集計しているからであるかもしれないが、ポーランド政府の統計が例に漏れずいい加減な可能性も無きにしも非ず。

 

 県別の統計では、第一位はマゾフシェ県 (Woj. Mazowieckie) で、323人 (35.42%)。

 首都ワルシャワ (Warszawa) の所在地であり、ポーランド中央経済情報センターによると、ポーランドに展開する236の日本企業の内約4割に値する95の企業が首都に置かれているそうだから、当然と言えば当然。ワルシャワ大学 (Uniwersytet Warszawski) やショパン音楽アカデミー (Uniwersytet Muzyczny im. Fryderyka Chopina) も含めた学術機関がいくつもあるのも、一つの理由であるはず。

 

 日本企業の県別/市別企業数

 

 出典:Centralny Ośrodek Informacji Gospodarczej (ポーランド中央経済情報センター)

 

 第二位は、ドルヌィ・シロンスク県 (Woj. Dolnośląskie) で、180人 (19.74%)。

 時々ではあるものの、在ポ日本大使館から出張領事サービスのお知らせが来る程なので、在留邦人の数が少なくないことは分かっていたが、この県もまたポーランドでも指折りの都市ヴロツワフ (Wrocław) のある県であり、近年は製造関連企業の進出が増加しているとのことなので納得(特に、ヴァウブジフ (Wałbrzych) という経済特区の置かれている街には、トヨタやブリヂストン、日本精工などといった日系企業の工場が多く立地しているようである)。

 

 第三位はシロンスク県 (Woj. śląskie) で、第四位のマウォポルスカ (Woj. Małopolskie) とは僅差の121人(13.27%)。ここにもまたカトヴィツェ (Katowice) という経済的には非常に重要な都市があり、立地的に隣国のドイツやチェコ共和国への交通の便も非常に良いので、日本企業関係者の足場となっているのかもしれない。

 

 自身が根を生やしたモポージェ県 (Woj. Pomorskie) はと言うと、下から数えた方が早い第9位で、なんと僅か13人 (1.43%)。県内の内訳によれば、ヨーロッパの中でもとりわけ小さいルクセンブルグ (総人口63万人に対して11人) やアイスランド (総人口34万人に対して10人) と同程度である。


 ポモージェ県内の外国人数内訳(抜粋)

 

 出典:migracje.gov.pl/ 

 

 日本の四国程度の面積 (18,293 km^2) の地域にたったそれだけの邦人しかいないとは驚いたものであるが、こちらで日本語教室を経営されている邦人女性数名を除けば存在さえ知らず、「自身のような物好きも含めた所でせいぜい15人程度であろう」と見積もっていたものがその通りであったわけだから、面白いものである。


 ところで、自身がどのようにして生活の糧を得ているのかと言うと、何を隠そう、自身はれっきとした非日系銀行の行員なのである。

 

 ただし、銀行勤めといっても、お金を貸し付けたり、金融商品の勧誘を行ったりしているわけではなく、所謂規制順守や金融犯罪対策に関わる仕事をしているので悪しからず。かいつまんで話をすると、テロ組織や犯罪ネットワーク、制裁対象者といった「悪い人たち」にお金が回らなくするための仕組みを整えて、監視する仕事をしているわけである。

 

 あまり詳しいことを書くと内規及び法律違反になるので、質問は受けないし、答えもしない。I plead the fifth.

 

 さて、やや言い訳がましい自己紹介的な投稿も本日でお終い。これからはもう少し「日常的」なことを書きたいと思う。