【干し柿とさなえちゃん】

 空気が乾燥している。干し柿が干上がり、硬くなり始めてきたので取り込むことにした。一個ずつ紐から外し、新聞紙にくるんでしばらく置くと、全体に白い粉が吹きしっとりとする(はずである)。

 ベランダの掃き出し窓の前に猫が居座って陽光を楽しんでいるため、彼をまたいでの出入りとなった。もう少しで終了というときに気がついた。ベランダにカマキリのさなえちゃんが横たわっている。片側の羽がよじれて体液が出ている。誰かに踏みつけられたのだ。誰かといってもその空間を移動しているのは自分しかいない。気がつかない内に踏みつぶしてしまったらしい。

【さなえちゃん涅槃寂静】

 それにしても、窓を開けてからの短時間に室内から移動したのだろうか。それとも室内の床で踏みつけ、足の裏につけたままベランダに移動させたのだろうか。あるいは、猫がこっそりと外に出してやったのだろうか。いずれにしても、踏みつけないように心がけていたのに、とうとうやってしまった。さなえちゃんよりも猫と干し柿に心を奪われていたせいである。

 さなえちゃんの臨終は確実である。今はアロエの葉の上に安置してあるが、完全に動かなくなったら埋葬する。この何日かは猫よりも我が家のアイドルであった。猫のおやつステックが好みらしい、これで与える食料の心配がなくなったなどと皆で喜んでいたばかりだったのだ。己の罪業の深さを感じざるをえない。

【トランプのウクライナ調停案】

 さて、動揺に罪深き存在がトランプである。ウクライナに求めた和平案というのが新聞に掲載されている。次の様なものである。(朝日新聞)

【ウクライナについて】

・強固な「安全の保証」を受ける

・軍の規模を最大60万人とする

・NATO(北大西洋条約機構)には加盟しない

・クリミアと東部2州(ドネツク、ルハンスク)は米国を含む国々から事実上の「ロシア領」として承認される

・南部2州(ヘルソン、ザポリージャ)の前線は凍結され、そこが事実上の境界線として承認される

・100日以内に選挙を実施する

【ロシアについて】

・制裁緩和が協議される

・G8(主要8カ国)に再び招待される

・欧州やウクライナへの「非侵略政策」を法律に明記する

・クリミアと東部、南部4州以外で支配するウクライナ領は放棄する

【侵攻について】

・すべての当事者は完全な恩赦を受ける

・合意事項の履行はトランプ米大統領を議長とする「平和評議会」によって監視、保証される

・すべての当事者がこの案に合意した時点で、双方が合意地点まで撤退し、即時停戦が発効する

 (米メディア・アクシオスやロイター通信の報道から))

【第三次世界大戦】

 これは和平案などというものではない。完全降伏案である。今のところ西洋の反応は確かでないが、アメリカと無縁にウクライナを支援する覚悟があるようには見えない。自国第一と、追認してしまうのではないか。

 かくして、ロシアは侵略を免責され、次の得物に取り掛かる準備が可能になった。手っ取り早いのはバルト三国だろう。そしてそこに止まる保証はどこにもない。許された無法者は東西南北に支配権を拡げようとする。ナチスの振る舞いである。隠して、西欧どころか、世界全体が戦火に覆われかねなくなった。トランプは愚かにも、チェンバレンの二の舞いを演じている。

【大手を振って国際社会に復帰するロシア】

 しかも上記の要旨にはないが、G8にも復帰させるつもりらしい。また、ロシア金融資産をアメリカが支配し、利益の半分を得るなどという火事場泥棒も忍ばせてある。

 アメリカとの軍事同盟などあてにならない。ロシアが北海道に軍事侵攻しても、全島を与えてで停戦しろといいかねないのだ。中国が台湾、沖縄を占領しても、国境の引き直しで収めろなどというかもしれない。

 アメリカがあてにならないとしたら、日本の安全はどのように確保するべきだろうか。単独の防衛体制樹立など、落ち目の日本には不可能である。韓国、フィリピン、豪州で新たな同盟を立ち上げたとしても、その有効性は疑問である。何しろ中国は10倍の人口と数倍の経済力を有するだけでなく、ロシア同様に非情な国家原理を有している。ことを構えればウクライナの二の舞となりかねない。

 いずれにしても、第二次大戦の参加に学んで確立された国際秩序は、米露の愚行によって完全に破壊された。人類は、戦争にまい進して気候変動の悪化を招く。地球的な破局へと転がり落ちていく。だれかに踏みつぶされたとしても、もはや憐憫の情をかけるべき存在ではないのかもしれない。