(携帯が鳴っている、携帯が鳴っている、携帯が・・・)

 あっ!しまった!

 ぼくは携帯に出ました。

 「・・・もしもし!」

 「今ね、1つ前の駅だから。遅れてごめんね。もう着いて待ってる?」

 穏やかな部長の声。

 そう、いつの間にかぼくは眠ってしまったのです。時計を見ると約束の4時を少し回っています。

 (うわっ!、まずい・・・)顔から血の気がさ~っと引いて行きました。

 「・・・いえ、まだです。電車がまだきていないので・・・」と、お茶を濁す。

 「そう。じゃあ、改札でね」

 部長はそう言って電話を切りました。

 幸運なことに、部長の乗って来た電車は行き先が違っていて、約束の駅に向かわないため、今、次の電車に乗り換え待ちだったのです。


 ぼくは飛び起きて、最寄り駅へと向かいました。

 これも、駅そばに住んでいることが幸いしました。

 幸運は続くもので、待ち時間ゼロでぼくの乗る電車が来ました。

 このとき、体にはかなりフラつきはあります。薬は間違いなく残っていました。


 しかし、どうにか電車に乗って、程なく約束の駅の改札に着き、部長と合流できました。

 「部長、お待たせして申し訳ありません」

 「いや、今着いたところだよ」

 ぼくが胸を撫で下ろしたのは言うまでもありません。


 駅の喫茶店に入り、現在の病状や薬の副作用、不眠気味であることなどを話して、診断書を渡しました。

 途中、微妙にろれつが回っていなかったかもしれません。

 部長は、過去にもうつ病で休職した社員がいること、休職中はおそらく6割の給料が支払われること、今月は有給と代休の消化で給与計算できることなどを話して下さいました。

 「とにかく、一生働いたとしての2ヶ月3ヶ月なんて、本当に大したことないんだから、ゆっくり、のんびり休むんだよ。差し出がましいようだけど、実家に帰った方が休めるんじゃないかな」

 部長はお茶を飲みながら、こう言って下さいました。

 ありがたいお話です。

 ぼくはこころからの感謝の言葉を返すよりほかありませんでした。


 これが、今日の夕方の顛末です。

 ポカをやってしまったのですが、どうにか運が味方してくれました。


 本当の意味での休職、療養、そして休養が今、始まったような気がしました。

 治して復職する、という希望が少しだけ見えたような気がしました。


 元気だった頃、会社や仕事内容に不満だらけでした。

 それを思い出して、自分が恥ずかしくなりました。


 復職できたら、以前とは別の気持ちで仕事ができるような、そんな気持ちになりました。