「どこかで梅の花が咲いている!」
肌寒い早春の夜。自転車でプチサバ町につながる
通りをわたっていた時に、一瞬、暗闇の方からふわっと
梅の花の香りがしました。
桜は、まだかな。いつもお花見の頃まで
まだまだ夜は寒いんだなと思っていたら、
ヘレン・ケラーがはじめて桜の花びらに触れたとき
海の波を感じたという話を思い出しました。
桜の花ひとつ分、ハンドルを持つ手が
ふんわりとあたたかく感じました。


いま点字の勉強をしているせいか、この頃よくミユキさんのことを思い出します。私が子供の頃、母はお家で「源氏物語」を読んで、録音テープをつくってわたすという盲人の方たちへの朗読ボランティアをしていました。そんなご縁で、目の不自由な方たちと瀬戸内海が見える小高い山の方へハイキングに行ったことがあります。その時に、私が手をつないで歩いていた女性がミユキさんです。遠くで見ていた山の緑は近くで見ると色んな色やかたちをした葉っぱがあって、青い空には雲が浮かんでいます。おだやかな海は、太陽に照らされて銀色に輝いています。それはとても美しい風景で、みゆきさんに、見えているものをぜんぶ伝えたいと思いました。そうして沢山の言葉を使って、その眺めを1つひとつ説明していきました。植物や花、海をすすむ船のこと、とんびが旋回している様子など言っても言っても足りなくて、たぶん段々早口になっていたと思います。そうして私が無言になった頃、ずっと笑顔で聴いていたミユキさんはいいました。「もっちゃん、ありがとう。よくわかるよ。」なんだか申し訳ない気がして、目をつむりました。そうすると、そよ風を感じました。小鳥がさえずる声が聴こえました。緑や花はいいにおいで、運動靴から伝わる地面のアスファルトは、熱かった。私もミユキさんに「ありがとう」と言いました。ミユキさんは、顔を空に向けてとても嬉しそうな美しい表情をしていました。

今思うと、これは原体験のひとつ。絵を描くことや音楽が大好きだった私が(とはいえ活字や本も好きで図書館の本をぜんぶ読もうとしていました)やがて言葉を仕事にするようになり、経験を重ねて言葉アート「素ことば」を創って表現しているのは、この日の体験や気づきが大きかったからだと感じます。そして私が座右の銘のように使っている「すべてに☆感謝」という言葉は、そんな子供時代に感じた幸せな気持ちがどこか深くに刻まれて、大人になった今も新鮮に続いているからなのかなと思います。ある種の、幸せな気持ちって、種のようなもので、経験という栄養が体内に満ちてきたら、しぜんに育って1つひとつぼっぽっと花が咲いていくのかな、そんな風にも感じています。

ところで、どうして点字を勉強しているのかというと、4月に「音楽へのご招待」という(参加作家それぞれが自由に3曲を選んで3つのCDケースに表現する)音楽がテーマの展示に、点字をつかった作品をだすためです。今まで(素晴らしくおびただしい)音楽をオールジャンルで楽しんできたので、3曲に絞るのはそうとう難しそう…と思ったのですが、言葉アートの制作モード(いつも無音です)になった時に、静寂のなかからスティービー・ワンダーの曲が浮かび上がりました。それで、しぜんに、点字なのです。(他の2曲はひみつ♪)

たのしい春を。

すべてに☆感謝

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【春のテンジのご案内】

※ご来場いただいた皆さま
関係者の皆さま
誠にありがとうございました!

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EXHIBITION

「音楽へのご招待」
現代作家によるCDジャケット展
Conpact disc Jacket art exhibition
2012年4月16日(月)~ 21日(土)
ギャルリー志門(銀座)
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漢字の「申す」を象った「モウスレーベル」
を設定。3選曲(スティーヴィー・ワンダー/
フジコ・ヘミング/ビートルズ)で
コミュニケーション(見る聴く話す)を
テーマに、活版ミクストメディア
(立体点字/研磨職人とのコラボ鏡/糸)
3作品の言葉アートを出品。

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さくら さくら展
2012年3月29日(木)~4月9日(月)
R&P GALARRY(兵庫県・夙川)

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「命の未来を想う」
-ポスター展と暮らしの提案-
2012年4月6日(月)~4月11日(水)
9:00~21:00(最終日17:00)
岩倉市生涯学習センター ギャラリー(愛知県)
東日本大震災の惨事をうけ、国内外のクリエイター
によりビジュアルアピールされた反原発ポスター展。
その200点から広い世代、多様な価値観にも
対応できるよう「命の未来を想う」をテーマに
選抜された約70点のポスター展示。
自然と共生する未来を考える《暮らしの提案》
カラマツストーブ/マイクロ水力発電/地産地消
[主催]「命の未来を想う」プロジェクト実行委員会
コドモノミライ-aichi- [後援]名古屋芸術大学

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「一家一展」長崎県上五島から銀座へ
【銀座展示】
2012年3月26日~31日
GINZAギャラリーアーチストスペース
主催:内閣府承認NPO現代美術普及協会 
【長崎県上五島】
2012年2月1日~3月8日
長崎県上五島の各家、上五島の建築物
《島の芸術祭 一家一展 in 津和崎》
主催:なんでんすっとたい津和崎、長崎県

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作品展 「3.11それぞれの思いと
復興への希望、そしてありがとう。」
をテーマに、被災地で支援活動をつづける
俳優 塩谷瞬さんが仲間の
アーティストの作品を集めた
作品展に参加させていただいています。
※作品の売上は東北の支援活動資金に
寄付させていただきます。
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(塩谷瞬さんHPより)
http://shunshioya.com/newslist.php
■参加アーティスト
書道家 紫舟さん
書道家 渥美さん
言葉アート 星 素子さん
カオカオパンダさん
キャンドルジュンさん
TUNAGARI のみなさん
and more…
■期間:3月3日~3月31日
■時間:17時~23時(LO)定休日 日曜
■場所:和食ギャラリー「おとしぶた」
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PS:
昨年の大震災から約1年が経って。
展示で訪れた場所や、ふだんの生活で、
被災された人や、被災された人に
あたたかい心を寄せる人たちに会えて、思います。
誰かの命を思いやるあたたかい気持ちで
つながったり、助け合える日本に生きている。

桜の季節も、
できることから、
できるだけ。

傷ついた人たちの心の回復、
そして復興がすすみますように。
私たち人間が、ずっと未来からみても
賢く優しい選択を
重ねることができますように。


祈 静
動 和


by:MOTOKOTOBA
(麻キャンバス作品より)