生成り色の半紙に

一本の線が走る

 

少しくねって

少し大げさにカーブして

時々、おもむろに小さくまわって

少々長めに跳ねが延びる…

 

いつまで経っても

クセの抜けない線、文字

 

ため息が漏れる

 

こうやって、

自覚しながら

一筆一筆ごとに軌跡を意識しながら

筆を進めるが

また、元の癖が出てくる

 

師匠の言葉

「君の字は

謙虚に生きようとしても

心の中では

我というか慢心というか

素直に人に従えない心があるね

 

いいかい、

よく見てお手本通りに書くってのはね…」

 

老師は椅子から立ち上がり

武道の型をするりするりと身を翻ししてみせ

 

「こうして同じことを何べんも繰り返しながら

正しい型を覚えていくんだよ」

 

といった。

 

赤い墨でわたしの「い」の字の横に

「いー」と言いながら、

3つ4つと「い」の字を書き続けた

 

「こうして、だんだん型を覚えていくから、いいかい?」

 

「………。」

 

私は全身から力が抜け、絶望と困窮で心がいっぱいになった。

 

「それが、できるようになったら、ぐっと変わるよ」

 

最後のことばは

 

深い井戸の底から見る地上の光のように、

近いようで遠い言葉に思えた。

 

慢心がすべてを壊してしまうのね…

それは、自分自身がよく知っていた。

 

人間関係面倒になると、相手のことを見るのを諦め

自分から去ってしまうクセがある

 

だから、深く相手を知ることもできず

途中で投げ出してしまうのだ、書の練習も人間関係も。

 

とことん付き合う

とことん知る

とことん沿ってみる

 

我を消すまで…

 

人によってはいとも簡単なこの言葉を

私は頑なに我を張り、自分を主張する。

 

そんなことが老師は筆の運びから感じ取ったのだ。

 

参った。

 

慢心は、危ない。。。「生きる」は練習みたいだ。