長男が二年生になり

何かが学校で起こっているようだが

その様子は何もはっきりしたことは解らなかった

そうして数ヶ月が経っていたある日のこと

 

学校から一本の電話がかかってきた

どうせいつもの忘れ物だろうと思っていたのだが…

 

弱視教室のT先生のちょっと慌てたような声で

「〇〇くんが、鉄棒から落ちて後頭部と首を強く打ったようなんです。

いつもはころんでもすぐ立ち上がるのですが、

今回はすぐ立ち上がれなくて…すぐ病院につれていってください。」

T先生の心配そうで、ちょっと、苛立ちが感じられた声だった。

 

学校へ行ってみると

保健室で長男は寝ていた。

保健室の先生、T先生の心配を一身に受け、

甘えて満足して寝ているように見えた。

 

「首痛いの?」の私の声に、彼は黙って頭を振った

 

「先生、一応脳外科に行ってみます。」

わたしは長男を車に乗せて近くの脳外科へ

記憶を頼りに車を走らせた

 

鉄筋コンクリートの古びたオブジェのような建物に

〇〇脳外科医院と書いてある

 

初めて訪ねる場所だった。

診察に入ると

おじいさん先生が古い診察室のデスクに座っていて

眼鏡越しにこちらを見て

「どうしたの?」と訪ねた。

 

これこれの事情で、と経緯を説明したが、

「ふーん、診た感じ大丈夫そうだけどね…」

といって息子の首を両手で挟んで上に下に向けさせ

「痛い?」と息子に尋ねた

 

わたしは一応、レントゲンかCTをとって

頭に異常がないか調べて欲しいとお願いした。

 

結果は「白」だった。

 

「何でもない証明」ができた。

 

息子を車に載せ、再び学校へ。

もう給食の始まる時間だった。

 

弱視学級の担任T先生を事務の先生に呼んでもらうと

程なくして、学校の一階の屋外の渡り廊下にT先生は現れた

 

「ご迷惑をおかけしてすみません。」

 

彼女はたまりかねた様子で

しかし、いつものおっとりとした様子と違って、

少々早口で続けた。

 

「今日はクラスでサッカーだったのですが、

クラス担任が、最初から〇〇くんだけ最初から鉄棒に居させ、

わたしは他の子供のサッカーの面倒を見るように言われていたんです!

そしたら、鉄棒から〇〇くんが落っこちて動かなくなって…」

 

先生は一瞬力が抜けたように肩を落としたかと思うと

 

込み上げるものをぐっと堪えて

 

「〇〇くんが可愛そうです!」と言うと

 

急いで、息子の手を引いて廊下の奥へ消えていった。

 

一瞬、見せたT先生の「怒りの涙」に呆然として…

 

気がつくといつもの渡り廊下にひとりで立っている自分に気がついた。

 

一体、学校で何が起こっているのだろう?

 

クラス担任からも、T先生からも、そして、本人からも

「真実」らしい情報が明かされてこない

 

胸の奥がモヤモヤして

嫌な空気がこの学校の中でうす巻いているのを感じていた

 

どうしたら、いいのか?

 

どのようなことが学校でおこっているのか?

この歯車の合っていない彼らの状況を

「どうしたら、解決できるだろうか?」

 

わたしはコンピューターのデータ検索機能のように

ハイスピードで解決に至るための道筋を模索し始めた。