私の頭が狂った!

子どもが噛みつき争う!

娘が膿だらけに!

夫は家に寄り付かない!

 

そんな入居からの半年は過ぎた

 

幸い私、娘をこっ酷く襲った症状は

家が原因だということがわかり、

幸い、その診断医が同じ生活圏にいて

幸い、その医者に受診した人に出会い、

幸い、立ち向かうべき”相手”が判明した。

 

それ以前に

私が立ち向かうべきものは

夫のこと

息子の障害と就学の問題…

 

山程だったけれど、

 

幸い、それでもどうにか進んでいく方向が見えたわけだ。

 

いざ進んで行こうと思ったが、

私の一番の持ち味だった

あの野生の”感”がなくなった。

 

すべてがラップにくるまれたような感覚…

 

触覚を失った昆虫

ヒゲのない猫みたいに…

 

そういえば

 

雨が降る前の土臭い匂い

葉っぱが濡れて水を弾く音

雨の振り始めのジトッとした空気

 

急に太陽が差してあったかかくなる空気感

 

サラッと乾いた風が窓から吹き抜ける気持ちよさ

 

春の気を帯びて大地が萌え

地を押し上げるような大地の鼓動…

 

そんな”言葉”が聞こえなくなった

 

ここではいつでも同じ色

同じ質感

同じ無臭

同じ無音

同じ真空

だった。

 

言葉のない建築

 

そう、

私がベビーカーで子どもを連れて

街に立ち並ぶあの家々の違和感は

この感覚を感じていたからなんだ!

 

図らずして

自分たちがそのような決定をしなくてはならなかったのは、

運命だったと

そう、仕組まれていたと

当時の自分も感じていた。

 

どうしてこんなことを体験させられるのだろうか。

 

よりによってこんなに大変な家庭に。

 

でも、きっと意味がある

 

当時からそう思っていた。

 

そう、きっと。

 

何か私ができることがある。

 

その意味がわかる時が来る。

 

(こんなに時間がかかるとはおもっていなかったけど。)

 

でも今はその意味も自分が経験する意味も

 

そんな自分が

 

今、存在する意義も感じとることもできる。

 

たくさんの恵みによって。

 

幸いとしか言いようがなく。