2005年秋、その年は晴天に恵まれ

過ごしやすい気候だった。

 

一ヶ月で基本設計が仕上がり

詳細設計をM社の担当女性建築士が

真夜中になるまで連日取り組んでくさだり

(メールを送るとどんな真夜中でも返事がやってきた)

一ヶ月半で建築申請が通った

 

とうとう、現場が動く。

 

ある晴れた真っ青な空の下

実家の父母を伴い、私達夫婦と長男二男は現場にやってきた。

 

この日は地鎮祭だった。

 

地元の白袴の神主さんが御神事を執り行い

厳かに進められていた

その時

風にのって遠くで笛の音が耳に届いた

 

だんだん近着き、はっきりしたメロディーが…

 

そして地鎮祭の真横に大きな山車が現れ

ハッピの男女がこちらを見つめながら

通り過ぎていった

 

ああ、私はここの住人になるんだ。

 

そう思った瞬間だった。

 

神事が終わると

相変わらずやんちゃな孫に翻弄される父母を見ながら

やがてここで住む日が

遠からず、いや、近々来るのかと思った。

 

実感はわかなかった

 

この家族が温かくぬくもりをもって

この地で暮らせる日が…

 

夫の着慣れないブカブカのスーツの後ろ姿を

見つめながら。