私の描いていた建築士のイメージは

「エライ」感じの出立ちに

重々しい風格をたたえ…

(完全に勝手な思い込みだが)

しかし

「バナナの建築士」は違っていた。

バナナのTシャツに

チェックの襟付きシャツを羽織り

ジーパンと黒いスニーカー

年はそれなりだが、「どこかのアンチャン」風だった

 

「この人は現代風なのかもしれない…」

 

古風な私の脳みそに

新しい風が吹き込んできた

 

初めての家にも全く臆することなく

ずんずん奥へ進み、

家の中をぐるっと一見し

家族一人一人の顔を確認すると

勧めたちゃぶ台の前に座った。

 

珍しく、子どもたちは襖の奥に隠れたままだった。

 

それからは何を話していたのかよく覚えていない。

 

夫とバナナの建築士さんは意気投合したようだ。

 

しばらく雑談めいた話をした後で

彼は帰っていった。

 

初めて、ことがうまく運びそうな気がした。

 

その後、夫は非常に機嫌が良かった。

 

「この人に決めよう!」前向きな言葉が夫からでた。

 

私もバナナの建築士は

今までにない新しい何かを届けてくれるような気がした。

 

青紫のアザになった心が

久しぶりに黄色いバナナのように

明るい色になった。

 

「わが家の救世主」が現れたような気がした。

 

一時期、耐えられないと思っていた夫との関係が

修復に向かうのではないかと安堵した。

 

一喜一憂、そのたびに心は揺らめき

 

これから出会う新しい出来事が

心のアザをも打ち消してくれるのではないかと

期待していた。

 

子どもたちは襖の後ろで

小さくなったまま

最後まで出てこなかった。