車椅子の設計士と契約を結んで一カ月が経った

 

あれから一本の電話もない。

 

なんとなくスッキリとしない

雲がかった空のような心地だった

 

ふと、彼の「作品」とはどのようなものだろうか

探してみようと思った

 

夫のパソコンから

慣れないインターネットに接続し

設計士の名前を検索した

 

するといくつかの「作品」の画像が出てきた

 

建物の壁が、塀などで使う軽量ブロックの家

打ちっぱなしのコンクリートのぶっきらぼうに見える家

パーティクルボードの内部工作の家…

 

どれも好みではなかった

 

変な胸騒ぎがしてきた

 

約束の日から2ヶ月半が経つ頃

さすがになにかしらの収穫があるかと思い

電話をかけた。

しかし、「待ってください」とのこと。

 

3ヶ月が立つ頃

私はしびれを切らせて一人、設計士を訪ねた。

庭の中央にあった陶器の像は

虚しく割られていた。

 

北入りの庭は前よりも苔が濃くなり暗く感じた

 

チャイムを鳴らすと

彼らは突然の訪問に面食らったようだが、

何をどうしようかと具体的な策があるわけではなく、

実際に彼を会って「最終判断」を下そう、と

内なる自分が行動に出させたのだと思う。

 

とりあえず席を勧められ、座ると

彼は、彼を私に紹介してくれた知人との関係を

詳しく話だし、なにかの言い訳をしているようだった

 

私はこの件についてやる気があるんですか?

そしてい急いでいるんです!

と問いたかっただけなのだが…

 

帰り際

私は、彼が契約書に金額を書く姿を

思い出していた

笑いを堪えて震える手…

何度も書き損じて書き直す様子を…

 

「終わったな…また一から振り出し…」

心の中で結論が出た。

期待に胸を膨らませ縮んでいった3ヶ月が終わった。

 

また、新たな一歩を踏み出そう。

 

私は夫に契約の破棄を提案した。

 

夫はその人に委ねたいと思っていたらしいが

私にはすべてが限界だった

そして、やはり笑いを堪えて震える手が脳裏に焼き付き

どうしてもことが進むように思えなかった。

 

私は設計士に断りの電話を入れた

 

「契約金はいくら戻りますか?計算してください」

 

しかし、契約金は一切戻らなかった。

一枚の設計図も見ず、話し合いもほとんどなく、

数十万は消えていった。

 

消費者センターに相談すると

「実際にお家をつくらなくてよかったですよ!

かえって得を特をしたと思ったほうがいいですよ!」

 

思いもよらない「答え」が返ってきた。