病院から

「あなたの赤ちゃん取り間違えました」などという電話など

かかってくることもなく、数ヶ月が過ぎていった。

やはりこの現実は私に降り掛かってきたことなんだ、と

なんとなく観念し始めていた。

相変わらず息子の目はガタガタ揺れていたが、

次第にまっすぐ前を見ようとして黒目が一瞬前を向くことがあった。

しかし、何かの流れに押し流されるように

黒目はぐるっと一周大きく回ってしまっていた。

 

4が月になっても首がすわらず、

ハイハイも遅かったが、

すくすくと体はおおきくなっていったし、

いつもニコニコしていてほとんど泣かない赤ちゃんだった。

其の存在はとても平和で可愛い方だとおもった。

 

しかし、アイパッチをつけメガネを付けると

突端に異様な雰囲気になる。

自然の赤ちゃんからとは全く異質なものがくっつく事によって

怪しい雰囲気を醸し出すのだ。

 

彼の責任でもない。

しかし、彼は世間で歓待されない存在だった。

ベビーカーで押していると後ろから

小学生が追い抜きざまに覗き込み

分厚い眼鏡と片目のない(絆創膏で見えないだけ)赤ちゃんを見て

ぎょっとして「何だ!?この赤ちゃん気持ち悪い」というのだ。

 

仕方ないことだが、

当の本人は何も知らないけれど

それを受け止めるのは親だ。