夫の実家に泊されてもらい、

 

次ぐ日の朝早い電車にのり、

 

渋谷からバスに乗り込み

 

東京の古い子供専門病院に到着した。

 

待合室は戦時中の負傷兵が集まる休憩所のように

 

低い天井に暗いコンクリートの壁を

 

蛍光灯が青っぽく照らしているものの

 

かえってその光がその場を暗く映し出しているようにみえた

 

みんな疲れ果てた顔をして

 

うんざりした目で待合室の中でうずくまっている。

 

様々な病気を抱えた子供とその家族が

 

異様な空気のかなでひしめき合っていた。

 

姑、夫、私、お互い院内をフラフラしては戻り

 

軽く言葉を交わして待っていた

 

もう二時間はゆうに立っただろうか

 

自分の名字が呼ばれたような気がした

 

も一度、聞き直す。

 

やっとたどり着いた診察室は

 

まるでどこかの納屋のように薄暗く

 

古めかしかっった。

 

そしてそこに少し猫背の働き盛りであろう、

 

ピリピリした男性医師がいた。

 

回転椅子でくるりとこちらを

 

直視した、と思われる状態、

 

下から上を見上げるようなきつい三白眼だった。

 

とっさに

 

この先生も自分の目を治したほうがいいのではないかと

 

思ってしまった。

 

しかし、あまりにも鋭い目をしてた。

 

ここは本当に戦場なんだと思った。