いきなり猫三匹と暮らす -589ページ目

いきなり猫三匹と暮らす

突如襲来した怪生物と犬好きのハートフルコメディ

いきなり猫三匹と暮らす


1週間出張して、トラニャは
ずいぶんと寂しかったみたいだ。
帰ってから声の調子が高くなっていたり、
いろいろな態度でそのことがよく分かった。

だが、シャムは特にうれしそうな様子もなく、
ベッドにも来なかった。

認知症だから仕方ない--

留守をねらって(?)トラニャが来たし、
この機会にベッドになれてくれればいい
そう思うものの、
なんだか寂しい感じがしていた。

そして2週間後。
ベッドに入って寝ようとすると、
トラニャが寄ってきて、肩口にうずくまった。

それから、シャムが部屋に入ってきた。
おや久しぶり、と思っていると、
シャムはベッドの少し手前で行儀よく座り、
とびきりの甘え顔でわたしを見た。

そんな顔を見るのは初めてかも?
ふだんシャムはあまり感情を顔に出さない。

それからシャムは問いかけるように
トラニャの顔を見た。

ウニャー!
トラニャはバン!と前足でベッドを叩いた。
シャムは無言でトラニャの顔を見つづける。

ウゥン、と小さく鳴いて、
トラニャはベッドを飛び出て
全速力で走り去った。

それからシャムは、ゆっくりと
ベッドで寝ているわたしのそばに来て
体をくっつけてきたのだった。

シャム、お前、2週間来なかったのは、
寂しがってたトラニャに譲ってあげてたんだね?
お前がいるとトラニャがくつろいで甘えられないから
ベッドに来なかったんだね。
2週間がまんして、どうしても来たくなって
ベッドに来たんだね。

そう、シャムはそういう猫だった。
いつだって他の猫に譲ってやっていた。
それがボス猫の務めだと思っているかのように。

久しぶりに、実にシャムらしい優しさを見て
心が温かくなった。
認知症になってもシャムはシャムだ。