いきなり猫三匹と暮らす -554ページ目

いきなり猫三匹と暮らす

突如襲来した怪生物と犬好きのハートフルコメディ

いきなり猫三匹と暮らす

シャムが認知症になったときは本当に驚いた。
あらん限りの大声でわめきつづけ、
何をどうしても止まらなかった。

すぐに動物病院に行ったが、認知症は
治療不可能だ。
鎮静剤を処方してもらった。

信じられないほど賢く、どの猫よりも強く、
そして、いつも自分はがまんして
他の猫に譲ってやっていたシャム。

マスコミで「理想の上司」として誰かが
人気No.1などという記事を見かけると、
いつもシャムの顔が浮かぶ。

自分のことは後回しにして弱い子を
かばってきたシャムは、どんな人間の政治家よりも
リーダーとしてふさわしくおもえた。

そんなシャムの優しい心が、認知症などという
身も蓋もない病気でかき消されてしまうことは、
どうしても許せなかった。

心が遠く離れてしまったようなシャムを抱きながら
わたしは祈った。
奇跡よ、もし起こるならばただ一度シャムのために起これと。

思えば虫のいい話だ。
ふだん一片の信仰心も持たないわたしが
祈るのだから。
神を信じぬものが何に祈る?

それでもわたしはただ祈った。
ほかに何もできないから、ただ祈った。

そして奇跡は起きた。
シャムは、以後発作を起こさず、
獣医師を驚かせている。

完全に元通りではないが、
再びシャムと心が通うようになった。

ただ、この奇跡には残酷な代償が伴った。
そんな気がしてならない