トラ猫トラニャは自分に自信がない。
劣等感が強くてひがみっぽい。
でも、まぁ、仕方ないかな、と思う。
先輩猫2匹のデキが良すぎた。
特に、シャムは信じられないくらい立派だった。
例えて言うなら、
長兄はノーベル賞を辞退し、途上国感染症治療の最前線にとどまって
治療を続けて逝った知徳兼ね備えた医師、
次兄ははグランドスラムのプロテニスプレーヤー
そして自分はうだつの上がらぬ平社員、のようなものか。
人間ならまだいい。
兄たちが立派すぎるだけで、自分は普通、と分かるから。
でも、トラニャには自分が普通と思える比較対象がない。
トラニャの知っている猫は兄二人だけだ。
つまり、トラニャの知る限り、自分は世界最底なのだ。
トラニャはケンカを挑んで一度も勝ったことがない。
長兄とご主人の間には自分にはない強い絆がある。
兄二人にできて自分にできないことがいっぱいある。
実力にも実感にも裏打ちされた最底辺の猫。
そう思ってしまうのも無理はないのかもしれない。
実は、トラニャには誰にも負けない素晴らしい才能がある。
でもトラニャはそれを知らない。
残念なことに、トラニャにそれを気づくことはできないのだ。



