トラ猫トラニャは、なつかない子だった。
うちにいきなり来た3匹の猫。
他の2匹はすぐなじんでくれてけど、
トラニャがなつくにはほぼ半年かかった。
なつくとトラニャはわたしを困らせるようになった。
朝、出勤しようとするとわたしを押しとどめようとする。
前に回って、膝に前足をかけて、
行っちゃイヤだと引き留めるのだ。
でも、仕事に出ないわけにはいかない。
しばらくするとトラニャは諦めて、
引き留めようとはしなくなったけれど、
気持ちが変わったわけではない。
出かける背中に悲しい視線が突き刺さる。
--行っちゃイヤだニャ
--いっしょにいたいニャ
ごめんよ、トラニャ。
小さなオマエの素朴な願いだけれど、
それはなかなか大それたことなのだ。
わたしにはトラニャのたった一つの願いを
かなえてやることができない。
