金環日食を見ることにした。
日食観察グラスは前もって買ってあった。
これは見るつもりで買ったのではなく、
見るつもりになったときにないと
困るからだった。
日食観察グラスを通じて見える
欠けた太陽は奇妙に非現実的で、
ほとんど白丸と黒丸の組み合わせでしか
ないように思えた。
※グラフィックソフトで作成
テレビで見るのと、それどころか
グラフィックソフトで作った画像を見るのと
大差ないんじゃないか。
自分の「眼前で起こっている」事実。
しかしそれはあくまで「ガラス越し」。
1億5千万キロの彼方の光景。
実際に経験していることと言っていいのか。
奇妙なもどかしさでなんだかイライラした。
地球の影のすべてが太陽に落ちたとき、
わたしは前からしようと思っていたように、
日食観察グラスを外して肉眼で見た。
ほとんどの部分が陰に隠された状態だったが、
それでも太陽はあまりにまぶしくて
やはりしっかりと目でとらえることは
できなかった。
もちろんこれは褒められたことではない。
直接見ることで網膜が損傷するおそれがある。
(余談だが「日食網膜症」という
医学用語があることには笑った)
そんなことは重々承知で、だからこそ
日食観察グラスも用意していたのだが、
リスクも見込みのなさも承知で
日食を「見る経験」をしてみたかったのだ。
だが、けっきょく再確認したのは、
日食観察グラスを通じてであろうと、
裸眼であろうと、
太陽は肉眼では捕らえられない存在だということだった。
太陽なんてごく日常的なもののはずなんだが、
人間の感覚を超えた存在なのだ。
「経験」ってなんなんだろう(笑)。