シャムがどこで生まれたかはわからない。
後で噂を聞いたところでは、前の飼い主さんの
近所の奥さんの猫だったらしい。
その奥さんが離婚したとき、シャムはおいていかれた。
ご主人にシャムの面倒を見る気はなく、
シャムは捨てられてしまったのだという。
それからどれくらいノラネコ生活を送ることになったかは
知るよしもない。
シャムにとっては辛い時期だったろう。
人間もそうだが苦労で駄目になる者も
成長するものもいる。
うたがいもなくシャムは後者だった。
彼は感謝の気持ちを強く持ち、
弱いものをいたわる猫になった。
それからシャムは前の飼い主さんの猫になった。
拾われたのではない。
彼は身を寄せていついてしまったのだ。
前の飼い主さんのところには、犬が1匹と
猫が数匹いた。
おそらくケンカをすれば彼がいちばん強かったろう。
犬は小型愛玩犬だったので、犬を含めても
最強はシャムだったと思う。
しかし彼は先住者に敬意を払い、
理不尽な仕打ちを受けても決して反撃を
しなかったそうだ。
そして彼は弱い子を守った。
前の飼い主さんは、なんども子猫を保護して
里親に出していたのだが、
他の猫が警戒威嚇するなかで
彼は新参子猫を可愛がったのだという。
犬が年を取ってボスの役割を果たせなくなると、
シャムは自然と重きをなし
ボス的な存在になっていったようだ。
これがシャムにとっていちばん幸せな時期だったろう。
だがそれは、前の飼い主さんの死によって
とつぜん断ち切られることになった。