
入った瞬間に後悔した。
ヤバイ、この店は変だ。
カウンター席が5~6席しかないちいさな居酒屋。
外見からはそこまで小さいとは思わなかったが、
それはいい。
その貴重なはずの席、奥の2~3席ぶんの
カウンターに、病院で出されるような薬袋が
いっぱい並べられていて使えなくなっている。
寿司屋でよくみかけるような、ガラスごしに
食材が見えるような陳列ケースが、
完全に空っぽだ。
間違えた、と言って引き返したいところだが
店主があいさつしてきた。
「いらっしゃい。先ほど前におられた方ですよね
こちらへどうぞ」
ああ、さっき店の前で顔を見られていたのか。
お店が休みだったらまだよかったのだが。
こういうときにごまかして逃げ出せないのが、
わたしの悪い癖だ。
つい、いったん離れながら結局はいることにした訳を
正直に話してしまった。
イノシシの肉が食べられるみたいなので--
わたしはちょっと珍しいものに惹かれるほうで、
またそれが当地の名物だったからだ。
この後の展開はなかなか予想外だった。
(続く)