認知症になってしまったシャム。
大声で叫びだしたときは、
本当にどうしようかと思ったけれど、
今はずいぶん落ち着いている。
たまに風呂場で大声を上げるけど、
最初の時ほどではないし、
わりとすぐに鳴きやんでくれる。
わたしがベッドにはいると、
けっこう横にやってくる。
ただ、甘えているというより、
習慣的行動をしている、
という感じだ。
シャムは、もともとトラ猫トラニャほど
表情豊かではなく、
黒猫クロほどストレートに
甘えない。
しかし、控え目ながら実に的確に
感情を表現してみせていた。
わたしの具合が悪いときは、
じっと顔を見つめて心配そうにした。
ベッドで隣にいるとき
わたしが「ああ、カワイイ」と思うと、
わたしの気持ちに呼応して、
静かに低くゴロゴロのどを鳴らした。
最近は、まったくゴロゴロ言わない。
「お腹がすいた」以外に意思表示を
することは全くない。
ただ、まったく心の無いロボットのようだ
というほどではない。
心が遠くにあるというか、
霞がかかっているというか、
昔のように通い合わせることが
できなくなっている状態だ。
認知症は治らない病気だと分かってはいるが、
「お腹すきました」の顔だけは
以前と変わらぬ様子なので、
つい儚い望みを抱いてしまうのだった。