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「DE VILLE HOUR VISION」の投稿以来の「OMEGA」の腕時計を紹介しようと思う。

スイスの時計ブランドとして真先に挙がるのが「ROLEX」とOMEGAだと言う事に反論は無いだろう。その位、日本に於いてこの2つのブランドの知名度は高いと言える。

そして日本ではOMEGAよりROLEXの方が好まれる傾向に有る様だ。実際リセールバリュー等は人気に準ずる為、ROLEXの方が高い。
しかし、どちらかと言えば現在の私の好みはOMEGAである。

正直、「DE VILLE HOUR VISION」の投稿で述べた「cal.8500」系が登場するまでは私の評価もROLEX>OMEGAと言う感じであった。
どちらもジャンル的には機械式の実用時計である。しかし、私は実用ならばクォーツと言う考えが根本に有り、機械式時計は趣味の領域だと考えている。
趣味性を追求するからこそ、ムーブメントや機構の面白さ、仕上げの美しさ等の工芸的な領域が重要になってくるのだ。但し当然ながら機械式時計でも精度は優秀な方が良いし、防水性、耐衝撃性、耐磁性に優れているに越した事は無い。実用を謳うなら尚更である。

ROLEXは、精度が非常に優秀でありメンテナンスもし易いと言う優れたムーブメントであるCal.3135(3136)を搭載した時計を中心にラインナップされているが如何せん実用に特化している為スチールバックなのが残念なのだ。当然ながらムーブメント自体の仕上げも一般レベルである。

DE VILLE HOUR VISIONは私の中ではかなり革新的な時計であった。100万円以下でスイスレバー式以外の脱進機を標準で搭載した唯一の時計であった。しかも故「ジョージ・ダニエルズ」氏の遺産とも言える「CO-AXIAL脱進機」である。今ではOMEGAを除けばジョージ・ダニエルズ氏の弟子であった「ロジャー・スミス」氏位しかCO-AXIALを搭載した時計を手掛けていないと思われる。(私の知る限りでは。)
何よりCO-AXIALを含め、シースルーバックから独特な装飾のcal.8500を見る事が出来るのは非常に嬉しい事である。基本スペックも高い。結局シースルーバックの有無と機械的な面白さからCal.8500が登場してからは私の評価はOMEGA>ROLEXとなった。

そして今回紹介する「Seamaster Aqua Terra 15,000 GAUSS」はこれまでの機械式時計の常識を覆す様なスペックを備えている。(画像1)
機械式時計の天敵とも言えるモノが「磁気」である。私は定期的に時計の歩度を測定しているが、その際必ず磁気を帯びていないか確認している。磁気を帯びると時計の精度が一気に悪くなってしまうのだ。
電子機器等の近くに時計が有るだけで、少しずつ磁気を帯びてしまう為、衝撃、湿気と並ぶ最も身近な時計への悪影響の一つと言えるだろう。
ROLEXにも「OYSTER PERPETUAL MILGAUSS」と言う耐磁性能を高めた時計が有り、他に「IWC」の「INGENIEUR」等も有名である。これらは軟鉄で作られたインナーケースでムーブメントを覆い、ムーブメントが直接磁気に曝されるのを防いでいる。当然スチールバックで中のムーブメントを見る事は出来ない。
しかしSeamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSはこれらを遥かに凌駕する耐磁性能を持ちながらもシースルーバックであり、当然インナーケース等は使用していないのだ!
ROLEX及びIWCの耐磁は1,000GAUSS相当でありSeamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSは名前の通りその15倍の耐磁性能を有する。(実際には80,000GAUSS相当の性能が有るらしい。)

この耐磁性能を可能にしたのは発想の転換であり、ROLEXやIWCは磁気の侵入を防ぐ方法だが、OMEGAは磁気の侵入を防がず、磁気に曝されても影響の出ないムーブメントを作る事を選んだのだ。
磁気の影響は「鉄」が磁気を帯びるからである。要するに、OMEGAは鉄を廃し新素材であるニヴァガラスやリキッドメタル等の磁気を帯びない素材を用いて、強い磁気の中でも影響無く作動するムーブメントcal.8508を完成させたのだ。これは画期的な事である。
当然同じ「SWATCH GROUP」に属する「Breguet」も磁気対策を進めており、ムーブメントが磁気の影響を受けないからこそ、ムーブメントに磁石を用いると言うアイデアが生まれ、天真を磁石で支え、衝撃にも非常に強くなる「マグネティック・ピボット」(画像2)を実現したのが「CLASSIQUE CHRONOMÉTRIE 7727」である。OMEGAの技術を更に一歩進めた様な印象だ。(画像3。「某宝飾時計店29」の投稿参照。)

まだニヴァガラスにも素材の耐久性や高級感等に問題が有るみたいだが、「実用」と言う面に於いては、ROLEXのCal.3135(3136)を完全にリードしたと思う。

気になるSeamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSの価格は\619,500と、通常の「Seamaster Aqua Terra」の価格が\535,500 なので殆ど変わらないと言える。
これは買得だが(私の予想では)今回Seamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSでcal.8508が初搭載されたが、今後はOMEGAでCal.8500系を搭載している時計全てがこのcal.8508(又は同様の耐磁性能を持った後継機)に切り替わって行くのではないだろうか。将来を見据えての開発だからこそ、ベースムーブメントを進化させているのだろう。

貴方も現在最高峰の機械式実用時計Seamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSをその腕に巻いてみては如何だろう。美しく装飾されたムーブメントと故ジョージ・ダニエルズ氏発明のCO-AXIALを楽しみつつも、防水性も十分で、現代社会に於いて逃れる事の出来ない電子機器からの磁気に負けないデイリーユースにぴったりの時計だ。(まあ、今後は殆どのOMEGAの時計が磁気を気にしなくて済むであろうと予想しているので敢えてSeamaster Aqua Terra 15,000 GAUSSを選ぶ必要は無いのかもしれないが‥)

ROLEXもOMEGAに負けず、私を驚かせる様な時計を作って欲しいと思う。ライバルが互いに切磋琢磨してこそ、より良いモノが生まれる筈だ。ROLEXの巻き返し、楽しみにしている!