世界各国、ゴールド(18K)を用いたジュエリーは数有れど、その中でも最もゴールドと言う素材を際立たせたジュエリーこそ、私は今回紹介するBOUCHERONの「Delilah」(画像1~6)ではないかと思っている。
通常ゴールドを用いた装飾品は、金を曲げたり融かしたりして形を形成し、更に彫金等を施して完成するモノが殆どだが、中にはゴールドを薄く伸ばしたり糸状にして編み上げる「ニッティング」と呼ばれる技法を用いたジュエリー等が有る。この様なゴールド自体をアルティザンの伝統技術に因ってジュエリーへと昇華したモノの代表が私は、イタリアンジュエリーだと思っている。
どちらかと言うと私の好みは美しい狂いの無い作り込みなのだが、イタリアメイドのアイテムは正直作りが雑と言うか、如何にも人の手で仕上げた感じが有る。癖の様なモノが有ったり歪みが有ったりするのだ。正直、これを味と見たり人の手の温かみを感じると考えたりするも、私の様に粗く適当な仕上げでクオリティコントロールがなされていないと考えるのも自由である。
所謂、定規で測った様な作りを好むのが日本人なら、己の感性に従った作りを好むのがイタリア人的と感じる。(「VISCONTI」の「Divina Proporzione Silver」を購入した時にも感じた印象である。「万年筆3 その2」の投稿参照。)
つまり大量生産するプレタポルテより一点モノであるオートクチュールの方がイタリアにマッチしていると個人的に思っている。ジュエリーも同様で、細工等の手作業がアルティザンに合うのだろう。(その意味では、アルティザンはアーティストに近いのかもしれない。)
結果、ゴールドジュエリーのトップを走っているのがイタリアと言う印象なのだ。
しかし、そんなイタリアのゴールドジュエリーにも勝ると断言出来るゴールドジュエリーがDelilahだ。
繊細且つ卓越した職人が只管根を詰めて編み上げたラリエットタイプの金の織物である。
この滑らかな仕上がりは、ゴールドに軽やかさを与えている。ストールやマフラーの様にさっと巻いたり羽織るだけで別格の気品を纏う事が出来る。(画像1、使い方の一例。)
ゴールドだとは思えない様な柔らかな手触りに驚く。世界に名立たるイタリアンゴールドジュエリーでもこれ程緻密な作りのモノは見た事が無い。(しかもDelilahはコレクションとして量産しているのだから恐れ入る。)
尚、Delilahの名は、旧約聖書に登場するペリシテ人の女性の名が由来とされる。夫を裏切る悪女だが、(夫と共に)非常に魅力的な人物像でありオペラ等でも演じられる。
語源の説は様々だが「綺麗な薔薇には刺が有る」と言う感じの女性を意味している様だ。このジュエリーもDelilahの名に恥じない妖艶な魅力を持っている。
現在はストールタイプの2点のみがカタログで紹介されているが、過去にはドレープを利かせた金織物を用いたペンダントトップやイヤリング等も存在している。
価格は、18KPGを120cm織り上げたモノ(画像1、2。画像1は全体、画像2は末端の拡大。)が\2,782,500、18KYGを120cm織り上げ末端に116個のダイヤモンドを雫の様に鏤めたモノ(画像3、4。画像3は全体、画像4は末端の拡大。)が\6,142,500である。(因みに画像5のペンダントトップタイプは18KYG製で販売時価格\1,302,000。)
非常に高価だがその価格に見合う価値の有る逸品だと思う。
更にハイジュエリーとして「Mosaïque Delilah」(画像6)も誕生。新たにBOUCHERONのクリエイティブディレクターに就任した「クレール・ショワンヌ」女史が手掛けたDelilahは金織物を超え「宝石の織物」となった。
但し、靭やかさは失われている印象で、通常のDelilahの方が自由に巻いたり出来るだろう。Mosaïque DelilahはDelilahのひとつの解釈に過ぎない。
貴女もDelilahでエレガントにゴールドを纏ってみては如何だろう。職人の技術を実感出来る絢爛たる一反は、現在BOUCHERONにしか成し得ない逸品だ。
マフラーやストールだけでなく、タイやヘッドアクセサリーとアイデア次第で無限に用途が広がるだろう。(ストールで出来るファッションは殆どが可能だ。)どういった装いが出来るか沢山悩んで頂きたい。
見て‥触れて‥身に纏って‥そして考える歓びを教えてくれるだろう。