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今回は、腕時計(主に機械式)の未来について少々考えてみようと思う。

現在の腕時計がどの様な存在と思っているかは「時計28」の投稿で述べさせて頂いた。
この結論からすると現代社会において、基本的には腕時計は必要が無いと言えるが、その上で、ファッションとして時計を身に付けるのは十分に有りだと思う。結局腕時計をする理由の大半がファッションアイテムとしてだと言えるだろう。これは携帯電話では代用が出来ないのだ。
在る程度の精度が有れば、私達一般人としての腕時計は、ファッション以外には然程意味が無い。つまり安価な時計でデザインが気に入れば十分という結論になる。

そして高額な時計は、やはりその時計自身に惚れる何かが有ってこそと言える。そうで無ければ態々大枚を叩いて買う意味が無い。勿論何に惚れ込んだかは個人に因って違うのだが、惚れ込んだ理由は否定してはいけない。(私の場合は解り易いが。)

さて、そんな機械式時計の新商品を見ていくと、いくつかの傾向が伺える。
ひとつは精度の向上。電池を用いず、バネやゼンマイ、歯車のみで時を表わす機械式時計は、些細な事で簡単に精度に影響が出る。重力、姿勢、磁気、温度、ゼンマイの残量等‥この様な様々な原因から精度を維持する為に様々な発明や研究の成果を組み込んだ時計が発表されている。
次に、耐久性とメンテナンスの効率向上。衝撃を緩和したり、新しい素材や軽量化等に因って時計自体のOH期間、果てには寿命を延ばす事を目的として開発された時計。
最後に新しい表現。時間の表示の仕方を如何にするか。時計師やそのブランドのアイデンティティを感じさせてくれる様な個性的な時刻表示が増えている。
後はオマケになるが、復刻モデル等や昔のムーブメント等を用いた時計がここ数年多く出ているのと、レディースに機械式時計(それも複雑なコンプリケーション)が増えてきた。

この中で私が最も注目している点が、「耐久性とメンテンスの効率向上」についてである。長い年月を刻む一生モノとも言われる機械式時計は、末永く使う事が可能で無ければならないと思うのだ。私はこれこそが機械式時計で最も重要な目指すべき道では無いかと思った。
そして耐久性とメンテナンスの効率向上は精度についても良い影響が出る筈だ。衝撃に強くなり、故障に強くなり、そしてパーツの摩耗が少なくなれば当然精度も維持し易くなる。そしてOHの期間が伸びれば、それだけ金銭的な負担も少なくて済むし、より長い期間時計と共に過ごす事が出来る。メンテナンスが容易で有れば、OHから帰ってくる期間も短縮されるだろう。良い事尽くめではないか。

「OMEGA」の「CO-AXIAL」(「DE VILLE HOUR VISION」の投稿参照)もそのひとつの形である。CO-AXIALを搭載した事でメンテナンスは通常のスイスレバー脱進機に比べても長くなった。
そして更に発展し「メンテナンスフリー」を謳った時計を発表したブランドが「Jaeger-LeCoultre」と「AUDEMARS PIGUET」、「ULYSSE NARDIN」、「Cartier」である。
どれも様々なアイデアを盛り込んであるが、実際の所は、未だ完全にメンテナンスが必要無いとは言えないと思う。画像はJaeger-LeCoultreが発表した「MASTER COMPRESSOR EXTREME LAB」。これらの時計の価格自体が数千万円なのでOHの金銭的な優位は全く無い。

将来、メンテナンスフリーとは言わないまでも、長期OH期間を可能とした時計を良心的な価格で実現して貰えれば、新たな時計史の一歩になるのではないかと思う。(その先駆けと言う意味ではCO-AXIALはやはり魅力的と言えるだろう。)